「家を売るから出て行ってほしい」。賃貸で生活している以上、家主からの退去通告は不可避なリスクです。次の住まいはどうやって見つける?家探しの際のポイントは?オークランドで15年以上、不動産セールスコンサルタントとして活躍するHarcourtsの一色良子さんにお話を伺いました。
一色良子(いっしき・よしこ)さん
大阪府出身。1996年に移住し、2000年から本格的に資産運営コンサルティングを開始。2004年に不動産販売資格を取得、ニュージーランド最大手不動産売買仲介会社フランチャイズHarcourts(ハーコウツ)グループにて勤務。
「自分主導」では動けないのが前提
ニュージーランドでは、家の売却を理由にした場合のテナントまたは入居者へのノーティス(通告)は42日前までと決まっています。つまりノーティスを受けたテナントまたは入居者は、1カ月そこそこで出て行かなくてはいけない。いくらその家を気に入っていて、長くそこに住みたいと思っていても、主導権は家主の側にあります。次の家をすぐに探さなければいけない上、引っ越し代などの諸費用もかかってきます。
シティーに単身で生活している分には次の住まいも見つけやすく、移動も簡単かもしれません。しかし、郊外に家族と住んでいる場合には話は違います。学齢期の子どもがいれば学区も考慮しなければいけません。また、車の運転はできるのか、近くに買い物ができる場所はあるのか、など条件を列挙していくと、候補に上がる物件の数は自ずと絞られてきます。
日本とは仕組みが違うことを頭において
日本から来られた方がよく口にするのが、「自分が住みたい街の不動産屋さんに行けば、そのエリアの物件をたくさん紹介してもらえるんですよね」ということ。日本では、特に都市部では賃貸業が盛んなので、1つ不動産屋を訪れるだけで、たくさんの選択肢の中から好きな物件を選べる風潮がありますが、それと同じことをニュージーランドで期待するとがっかりするかもしれません。
ニュージーランドの場合、個々の家に対して担当者が決まっているため、興味のある物件があったら、物件ごと別々に担当者に連絡を取る必要があります。たとえばシティーの物件を契約しようと思っても、その家の担当者がいる不動産屋がノースショアにいる場合には契約のためにそこまで行かなくてはいけない。日本の常識はここでは通用しません。家探しは非常に手間と時間がかかる作業です。
決断は早く、迷いは禁物です
さらに日本人によく見られる傾向が、決断の遅さ。物件の内覧に行って、ある程度気に入ったとしても「全ての候補を見てから決めます」とよく言われます。迷っているうちに他の人が契約してしまい、後悔するというケースをこれまでいくつも見てきました。7~8割「いいな」と思ったら、どんどん申請書を出しましょう。10軒見て回ってようやく決まる、くらいの心づもりでいてください。
家を貸す側の立場からすれば、言葉の面でコミュニケーションが取りにくい外国人よりも、現地のネイティブを選びたいのが本音です。外国人だからだめ、ということではありませんが、競争相手が多い場合、どうしても不利になってしまうのが実情です。
私たちはクライアントに対し、どこでもいいから紹介する、ということはしません。必ずヒアリングをし、条件や希望を聞いた上で物件を精査してご案内しています。その提案の中から「ここに住んでもいいな」と思うものがあったら、すぐに動いてください。早い決断と行動が家探しをする上で重要なポイントです。
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