ニュージーランド政府観光局と自動車協会AAの共同出資で設立された「Qualmark」。観光業界の品質向上に寄与してきた。これまでサービスの質を星の数で示していた「Qualmark」から一歩進み、環境への配慮という項目を加えた「Qualmark Green」が08年の8月から実施された。同社CEOのジェフは「この国の最大の財産は残されている自然環境であり、それを守ることが利益にも繋がる」という。
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旅行業界の品質マーク





ネルソン、インバーカーギル、ダニーデン、クライストチャーチ、ウェリントン、そして現在いるオークランドと、私は子供の頃からニュージーランドの様々な地域で暮らしてきました。大学ではマーケティングを専攻し、その後、仕事も銀行や専売公社や市役所のリサーチセクション、企業の人材開発部門など、それに関連した道を歩んできました。現在の「Qualmark」に来たのは2004年のことでした。実はその前まではオークランドのアートギャラリーにいたのです。これを言うと中には驚く人もいるのですが、私としては昔から美術には興味があり、好きでしたし、ショーやカスタマーサービスを担当するセクションにいましたから仕事自体の内容はそれまでとあまり変わりがありませんでした。そして現在の「Qualmarl」に入ってすぐに、この「コルマーク・グリーン」の実施に向けての取り組みが始まったのです。「Qualmark」は1993年からスタートしています。それまで国の基幹産業が農業であったニュージーランドが本格的に観光業にも力を入れ始めていた頃です。独自でホテルやモーテルなどのガイドブックを作っていた自動車協会と政府観光局が一つになって、アコモデーションをはじめアクティビティーの催行会社や交通機関など観光に関わる企業に対してそのサービスや施設の質を星の数で表示し、「ニュージーランドの旅行業界の品質マーク」として国内外の利用者にわかりやすくしようと努めてきました。これは世界的にも同じような流れにありましたので、多くの人に利用されてきたと思っています。そして、同じ方法で今度は、環境についてももっと配慮して、今ある状態を守っていこうというのが去年から実施している「Qualmark Green」なのです。
世界初の環境の星付け
環境についての基準を設け、それに併せて星の格付けをするという国レベルでの取り組みは世界ではニュージーランドが初めてだと思います。では、この指標は一体どのようなことを基準に制定されているのかと言いますと、大きくは5つのカテゴリーがあり、そのすべてをクリアーしていくことを義務付けています。
1.電気、ガスなどのエネルギーの効率的に使うこと、
2.汚水などをコントロールして環境へのインパクトを減らすこと、
3.水を賢く使うこと、
4.自然環境を守るという姿勢、
5.地域とのつながりを持つ、という項目です。
たとえば同じアコモデーションでも客室数数百のホテルと、B&Bでは規模が違います。しかし、その規模に応じて環境に対してできることが必ずあります。ある5つ星のホテルではダンボールや厨房で出た廃油をすべて捨てずに他のものへ利用する取り組みをしていますし、同じく5つ星のB&Bではコンポストに入れたり、液肥を作りそれが庭のハーブをまた育てるというようにしていたりもします。また、DIYの国であるニュージーランドでは、たとえば、壁一つ作るにしても、新しい材料を買ってくるのではなく、昨日、取り壊した古い暖炉のレンガを利用する、といったような再利用の知恵にも長けています。ヨーロッパから移民してきた当初、壊れた部品を注文して取り寄せて交換するためには、いちいちヨーロッパまでの往復の船の時間がかかっていた。それを待っていては仕事ができないので、ないモノは自分たちで作るというキウイの伝統は今もしっかりと生きているのです。
ニュージーランドが考える利益とは。
「コルマーク・グリーン」の意味することは「継続可能なツーリズムビジネス」です。私を含め、ニュージーランド人はみんな小さな頃から自然環境に触れて育っています。それは言い換えれば、自然に育ててもらった、ということになります。ですから、自分を育ててもらった自然を守ることは、ニュージーランドに恩返しをするということにもなります。また、自然の中で育ったがゆえに、自然環境に対しては誰もが親しみがありまので、「コルマーク・グリーン」のような取り組みにも抵抗なく、あるいは、あたりまえのこととして受け止めることができるのです。自然環境を考えた設備やシステムを構築することと、質のいいホスピタリティーのサービスを受けることは一致できるのです。ニュージーランドに訪れる海外からのビジターはこの国の自然を楽しみに来ている人が多いはずです。にもかかわらず、その自然が無くなってしまえば、この国の魅力はたちまち失われてしまい、世界の旅行者に見てもらえるすばらしい部分が消えてしまいます。ですから、自然環境を守り、今日来た人が10年後にこの国を訪れても、まったく同じ自然環境を楽しめるようにすることこそ、ニュージーランドやここに住む人たちにとって、本当の意味での利益に繋がるのです。現在は約、300の企業や会社が参加していますが、今年中には一気に、2200にまで増える予定です。これは私たちの環境に対する意識の高さでもあります。自然と共に暮らすという生き方をニュージーランドは世界に提案しているのだと思います。