Vol.148 デザートレストランMilse、ヘッドシェフ


オークランド、ブリトマートの小さなデザートレストランMilse(ミルズ)は夜10時を過ぎても満席。予約なしで行ったらテーブルを確保することはほぼ無理。それでもテーブルが欲しければ、20〜30分待ちを覚悟しなければならない。
その理由は店内のショーウインドウに飾られているデザートを見れば分かる。整然と並べられた色とりどり、形状さまざまなデザートの数と種類に圧倒され、リピーターが続出しているからだ。ニュージーランドでは珍しいこのデザート専門のレストランはどこかの店でディナー終えた客に「じゃあデザートはMilseで」と、夜遅いにも関わらず、ディナー後のデザートを食べに来させるトレンドを作り出したと言われる。
ここまで多くの人を引きつけるようになるとは思ってもいなかったと語るヘッドシェフのBrian Campbell氏に伺った。

ais【Profile】
Brian Campbell / ブライアン・キャンベル
Head Chef, Milse dessert Restaurant / デザートレストランMilse、ヘッドシェフ
1980年スコットランドのグラスゴー生まれ、育ち。地元の料理学校を卒業後、ロンドンの名店でシェフとしてキャリアを開始。2005年にFrench Caféに招かれ、ニュージーランドに移住。以後オークランドの名店で経験を積み、2013年にMilseオープンに参加。自分では甘いものはあまり食べない

Milse
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オープン2日目から反応が

Milseは2013年の4月にオープンしました。親会社が隣のカジュアルレストランOrtolanaをオープンさせる際に隣にあった小さな場所にこの店を作りました。親会社がいくつかのレストランを経営しており、それらの店で出すデザートを作ることも兼ねてデザート専門レストランにしたわけです。オープン当日は全くお客さんが入らず心配したのですが、2日目からはそれが杞憂だったというほどお客さんで溢れ出しました。私はキウイたちがディナーの後、デザートを他の場所で食べるシーンをよく見かけました。メインを食べたレストランでデザートを食べず、別の店でデザートを食べるのです。夜遅くなってもその様子は変わりませんでした。ですから、デザートで知られるようになれば、どこかのレストランでメインを食べたお客さんが「デザートはMilseで食べよう」と言って来店してくれると信じていたのです。とは言ってもこれほど忙しくなるとは思っていませんでした。オープン時は6人で始めたデザートレストランでしたが、今では14人いるスタッフは朝6時から始動しはじめ、交代制で午前1時くらいまでデザートを作り続けなければいけません。店は朝10時から、夜遅くほぼ午前0時くらいまで開けています。お客さんは閉店直後までいるので、午前1時まで開けていることも珍しくありません。色や大きさまで考慮すると約90アイテムのデザートを作っており、他店用に卸しで作るデザートも30種類ほどあります。


French Caféからぜひ来て欲しいと乞われた

私はスコットランドのグラスゴーの料理学校を出た後、ロンドンでシェフとして働き始めました。今ではセレブリティ・シェフと言われるGordon Ramsayの店でも働きました。私がデザートを作るようになったのはロンドンで働いていたある店でデザートシェフが突然店を辞めたため、ヘッドシェフが当時21歳だった私にデザートのレシピが詰まったフォルダーを投げつけて「今からデザート担当になれ!」という半ば強制的な命令だったからです。2005年にFrench CaféのオーナーシェフSimon Wrightに誘われて普通のシェフとしてニュージーランドにやって来ました。ニュージーランドはスコットランドに近い気候、雰囲気を持っています。私が生まれたのがグラスゴー近くの島だったのですが、そこはオークランドでいえばグレートバリア・アイランドに似ています。ですから、生活しやすいという直感があったのです。それは正解でした。当時はシェフ仲間で評価の高い店は3店しかないと言われており、オークランドは人口が増えて大きな都市になっていくのを感じましたので、いいレストランがますます必要になると思いました。その後、オークランドのBracu、Kermadecで働き、クイーンズタウンのHiltonホテルがオープンする際にレストランの立ち上げに参加しました。さらにその後はスペインでも有名レストランで働きました。スペインではボランティアでレストランを手伝っていたのですが、料理のレパートリーが広がり、技術が向上したのが収穫でした。料理は素材が何より大切だと実感させてくれたのがスペインでの経験でした。

季節を感じられるデザート

14人いるスタッフの中にはフィリピン、韓国、日本、インドネシアなどアジア系が約半数を占めます。一日9時間以上の拘束はしません。週2日の休みもしっかり取ってもらいます。働きすぎるといい仕事はできませんから。しかしながら、私は一日14〜15時間デザートを作り続けています。そうしないと間に合わないのです。店は15席しかありません。ですが、週末になると100人を超すお客さんが来てくれます。席に着けないお客さんもたくさんいて、しかたなくテイクアウェイをしていただきます。マカロン、ソルベなどが人気です。親会社はオークランドの西Kumeuに自前のガーデンを持っています。そこではMilse専用の小さなセクションがあり、来シーズンになれば穫れるフルーツが育つのを楽しみにしています。私が目指すデザートは季節感のあるものです。私はあまりに甘すぎるものは口にしません。ですから、デザートに求めるのは砂糖の甘さではなく、その季節で穫れる素材の天然の甘さと酸味です。例えば洋梨ならば、夏の最盛期には甘さがピークに達します。また、イチジクも夏の終わり頃に最もおいしくなります。パッションフルーツやブルーベリー、ラズベリーなども春から夏にかけてのベストのシーズンによく使います。また、冬はパティシエにとって厳しい時期になりますので、チョコレートやナッツなどを使います。日本の影響としては抹茶なども取り入れるようになりました。デザートを作るようになってから"何でも作れるシェフとして考え、パティシエとしての技術を持つ"をモットーとしています。その一環か、私は他のシェフのレシピをまねることはしません。季節を感じさせる素材を最もおいしい時に使い、自分のオリジナルを作って行きたいと思っています。

今後の展開

来週からホリデーをかねてニューヨークに行きます。その理由はチョコレート製造機を買うためです。この店が軌道に乗って来ましたので、今度はチョコレート専門店を出したいと考えています。オークランドはますます発展し、多くの旅行客がやって来ると期待されています。その時に、Milseとこれからオープンするチョコレートショップが多くのお客さんを引きつけられれば、デザートシェフとしてこれ以上の幸せはありません。ところで、Milseとはどういう意味だか分かりますか? 実は私の生まれ故郷スコットランドの言葉「ゲール語」でデザートを意味します。デザートを食べたくなったらMilseを思い出してください。夜遅くまでやっています。

カテゴリ:レストラン/フード
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