ニュージーランドのコーヒーカルチャーはここ十年で大きく発展、誰もがおいしいコーヒーめがけてカフェに集まってくる。バリスタがコーヒー愛好家の話題になるのも近頃のトレンド。そのコーヒー界に、最近は日本人のバリスタが増えている。そんな中のひとり、クライストチャーチのカフェで働くバリスタ、河野英幸さんはNew Zealand Barista Championship 2010で準優勝している。
【Profile】 |
コーヒーとの馴れ初め
2000年にワーキングホリデーでニュージーランドに来ました。日本では大学卒業後ホテルに就職し、キッチンハンドやベルボーイなど、下っ端の仕事をいろいろとなんでもやりました。ニュージーランドでは、クライストチャーチに落ち着き、最初は英語学校に入りました。卒業後の最初の就職先は、市内にある日本人旅行客相手の大手お土産屋さんです。ビザもこのお店のサポートでワークビザに切り替えてもらいましたが、後には当時の移民ポイント制度の条件に合い、永住権が取れました。でも日本語ばかりのお土産屋さんでの環境は英語も上達しないので、なんとか英語しかしゃべらない職場での仕事を、と思い始めたのです。たくさんの求人広告に応募しましたが、なかなか仕事が見つかりませんでした。そんな折、クライストチャーチで結構流行っていたカフェでの求人広告があり、応募したのです。オーナーに、掃除でもキッチンでの皿洗いでもなんでも文句を言わずやります。どうぞ雇ってください、試してください、お願いです、と頼み込みました。その姿勢がオーナーの目にかなったのでしょう。面白いやっちゃ、雇ってもいいかと思ったのかもしれませんね。このカフェで働くことになったのです。これが自分のコーヒーとの出会いです。
バリスタへの道
このカフェでは、何でも喜んでやりました。学べるものはなんでも学びました。また外国人である自分が、仕事仲間のキウイの環境にフィットするよう努力しました。ここのボスには顧客が多く、コーヒー愛好家がこのボスめがけてご指名で飲みに来るのです。このボスのコーヒーを飲みに来るのが楽しみとなっているのですね。その様子を見ていてうらやましさと共に、自分もこういうバリスタになってみたい、という願望がうまれてきたんです。これがコーヒーにどんどんはまって行ったきっかけだと思います。最初にいいボスに会えたことがバリスタへの道を開いてくれたんです。早くから、コーヒーメイキングの技術を学べましたから。この後、いくつかのカフェで働き、バリスタ大会にも挑戦し始めました。2005年にカフェに就職し、2006年にNew Zealand Barista Championshipに初出場、地区大会で3位でした。2008年には全国大会で3位、2009年は2位、2010年2位になりました。今年は、クライストチャーチ出身のナショナルチャンピオン(Luciano Marcolino氏)がロンドンでの国際大会出場。そのお手伝いとして同行させてもらいました。ひのき舞台でのコーヒーメイキング下準備です。実際には荷物の運び屋だったのですがいい経験でした。こうしてクライストチャーチのコーヒー界の仲間としても認められるようになったのですが、実は最初の頃、日本人であることに戸惑いを覚えたのです。
ニュージーランドでの日本人バリスタ
最初カフェに雇われた時、お客さんが自分の事をどう見るかとか、日本人の自分の作ったコーヒーを気に入ってくれるかとか、心配したものです。また店のキウイの仲間が、日本人の自分を意識しているのも感じました。でも雇用してくれたオーナーは面白いから試してやろう、とかえって自分にはためになる反応を示してくれたので助かりました。自分の何でもやります、やらして下さい、を実行し、ボスにも認められ、バリスタに到達した今、日本人としての意識はなくなりました。キウイの仲間も同じで、もう戸惑いは感じません。今、ニュージーランドで頑張っている日本人バリスタはかなりいますよ。一生懸命やれば異国でも認めてもらえるんです。日本にはバリスタの数はまだまだ少ないようですが、、、。
現在と将来
今の職場、クラフテッド・コーヒー・カンパニーに移ってきたのが去年の11月でした。新開店のお店でした。このお店のオーナーも、New Zealand Barista Championに何度もなっている人なんです。国際大会にも出場して上位入賞もしています。このお店は、カフェだけでなく、豆を卸す仕事もやっています。自分はオーナーの右腕として、このお店である程度まかされてもいるのですが、将来は、コーヒー豆についてももっと勉強したいと思っています。コーヒー豆の生産国に行ってコーヒー農園の方と豆について話し合うのも夢ですね。将来豆の買い入れの仕事に結びつきますから。コーヒーメーキングを教えることもやってみたいし。もちろんバリスタチャンピオンシップに出場し、チャンピオンのタイトルを獲得する夢も捨ててはいません。ボスも応援してくれていますので頑張ります。カフェを持つ事は今のところまったく考えていません。将来もないと思います。バリスタになると皆店を持ちたいと言うんですよね。でも、コーヒー業界にはこれからも長くいるつもりです。