ニュージーランドは移民フレンドリーな国だ。極端な右翼の政治団体もなく、人種差別も少ないので移住しやすい国だと言える。コスモポリタン社会とも言える。ワイタケレ市が移民を対象に提供している多文化・移民サービスチーム(Multicultural & Migrant Service Team)に所属し、定住サポートSettlement Support、移民の相談窓口として働く柴田あゆみさんと彼女のチームに話を聞いた。
【Profile】 |
あゆみさんは最初はワーホリで一年のつもりでニュージーランドに来たのにもう14年。
どうしてそんなに長く住むことになったんですか?
「どうしてでしょうね。ニュージーランドの生活と波長が合った、っていうのかな。実は最初のビザが切れる頃にいったん帰国した時に気が付いたんです。たった2週間ほどの帰国だったんですけれど。日本ってものすごく速いですよね? 日本人って食べるのも速いし、歩くのも速い。すべてが私のテンポとまるで違う感じがしたんです。しばらくぶりに帰ったから、友達と超過密スケジュールで会って飲みにいったり、遊んだり、楽しいことは楽しかったんですけれど、なんかドッと疲れてしまいました。親は娘が帰って来たと思って喜んだのもつかの間(笑)。親不孝な娘です。その時の経験で、ニュージーランドにもっと住みたい気持ちがはっきりしたんです。」
あゆみさんの現在の仕事、定住サポートとは、どんなことをするのですか?
「政府の労働省の管轄ですが、身分的にはワイタケレ市の職員。公務員です。私たちの仕事は、移民や難民、それから留学生がワイタケレ市に定住しようとするときの、ニュージーランド生活に関する全般をサポートすることです。例えば、IRD番号はどこでどのようにして取ったらよいのか、家探しはどうしたらいいのか、ビザの延長申請にはどの書類を用いたらよいのか、自動車運転免許証はどうやって取得するのか、政府補助金の種類や申請の方法は、などなど、市民生活を営むのに必要不可欠なあらゆることについて、最新の正しい情報を利用者に無料で提供します。ミーティングはもちろん、メールや電話での相談も受け付けています。自国とNZとではシステムが全く異なっていることがよくありますから、"こんなことに出会ったんだけれど本当にそれでいいんですか?"と、確認のために電話をしてくる方もいます。例えば、日本では子供が小学校に入学するのは4月、と決まっていますよね。でもNZでは子供が5歳になる誕生日のその日に小学校に入学する。え? 戸惑うのは当然ですよね。」
イミグレ関連の相談はやはり多いのですか?
「去年の5月からイミグレ関係の相談は、どの書類を使ったらよいか、というような情報を提供すること以上はできなくなりました。移住アドバイザーの資格、免許が必要だからです。移住アドバイザーはビジネスとして業務していますから、私たちが特定のアドバイザーを紹介することはありません。市内で営業している人のリストなら提供できますけれど。」
「利用者の個人情報は細かく尋ねません。人種や性別、年齢層、といったベーシックな情報のみ。利用者の名前、職業や住所はその相談内容に関連していなければ必要ではありません。フィードバックを期待してはいませんが、事後報告はありがたいです。提供した情報が役にたったのかわかりますから。何回も別件で相談してくるリピーターもいて、そんな人とは雑談を交わしたりもします。私たちが利用者に対応した際に集めた情報は、データベースに入力保存し、四半期ごとにDepartment of Labour (労働省) に提出します。その他、6ヶ月毎に、特に目に付く問題点、問い合わせ内容や人種の変化といった内容のレポートを出します。定住サポートに問い合わせや相談も持ちかけることは、政府へ「移民の声」を反映させる手段となりますから、どんどん相談して欲しいです。些細な事と思うような事でも、同じ問題を何千何万という移民が抱えているとなれば、政府レベルでの対応が考慮されるはずです。」
どんな人がスムーズに定住できるのでしょうか?
「オープンマインドの人。新天地で一からスタートと割り切って、いろんな事にトライする意欲がある人、小さな一歩前進を喜べる人は、移住し易いタイプではないでしょうか?これは日本人にはあまりみられませんが、就職活動をしている移民が、自国でしていたのと同等の仕事にしか就こうとしない、ということがよくあります。それで、いつまでたっても仕事が見つからない。何がやりたいか、の前に、今ニュージーランドで何が出来るかを考える必要があります。「出来る事」も、自分で出来ると思っているだけでは十分ではありませんので、出来る事を証明しなくては雇用主にアピール出来ません。企業はニュージーランド経験を重視するところが多いですから、外国から来たばかりの移民は、残念ながら移住早々にやりたい仕事にすんなり就きにくいです。まず出来る事から始めて、階段をゆっくり上るように目標に向かってほしいですね。焦れば転んだり落ちたりします。徐々にキャリアアップしていくのです。」
あゆみさんの上司、マネージャーのダヴィドは、ニュージーランドに移住する前に自国フランスでしていた仕事と同レベルの仕事に就くまで4年かかったという。国際色豊かな定住サポートチームの他のメンバーもそれぞれ4-5年かかって、いまのポジションにいる。「逆に他人に対して、状況に対して、自分に対して何でも高望みするタイプや、コップの水が"Half Full"という考え方が出来ず、"Half Empty"と考えてしまう方は、満足しにくいタイプで、移住に際しても苦労されているようです。」