コーヒーを淹れるプロ、バリスタ。ニュージーランドでバリスタの腕を競い合う大会であるNew Zealand's National Barista Championship 2010で堂々4位に入ったのが中村カヨ子さんだ。酸味や苦みなど、コーヒーは豆によってさまざまな味がある。その中にはブルーベリーのような味といった表現を使うこともあり、さまざまなコーヒーを飲み比べていくと、微妙な違いがはっきりとわかるようになると言う。
【Profile】 |
カフェという職場
ニュージーランドに来たのは11歳の時で、家族と一緒の移住でした。そのまま中学、高校、大学とオークランドで過ごし、大学では生物学を専攻していました。そのときにアルバイトしていたのがカフェだったのです。もともとカフェのカジュアルな雰囲気やコーヒーの香りが好きで、そのまま引きずりこまれてしまった感じで、就職もそのままカフェにしたのです。ただ、実際に仕事として考えた時、どうせやるのであれば、バリスタとしての技術も向上させたいと思ったのです。現在、マネージャーをしていますEspresso Workshopはオーナー自身がバリスタ大会に出場していますし、また賞も取っています。その話を聞いて「ここで仕事がしたい、そしてバリスタの大会にも出たい」と直接就職を申し込んだのです。大会に出場したいという希望もあったので、実際に働き始めてまずはコーヒーについての知識を本で学びました。産地、歴史、種類、そしてそれが化学レベルでどのようになるか、などです。そして、コーヒーの味についても勉強しました。Espresso Workshopではカフェのほかにロースティングをする場所を持っています。実際に豆をローストする場所へ行き、いろいろな豆の試飲をしたのです。はじめは酸味が強いとか、コクがあるといった大ざっぱな違いだけを理解していたのですが、何度も足を運ぶうちに、これはグレープフルーツのような甘味とか、これはローストされたアーモンドなど、それぞれが持つ味の一つ一つの違いがわかるようになりました。こうしてお店以外での勉強も進め、ついに今年3月、4月と、オーナーと共にニュージーランド・ナショナル・バリスタチャンピオンシップに出場したのです。
バリスタチャンピオンシップ
この大会はコーヒーの味と淹れるテクニックを競うものです。審査員はテクニックをジャッジする人が2人、味を審査する人が2人です。与えられた15分という時間でエスプレッソを4杯、カプチーノを4杯、自分のオリジナルを4杯の計12杯のコーヒーを作ります。豆を選ぶところから始め、作りながら自分が淹れるコーヒーがどんな味なのかを説明します。大会に出場することが決まると同時に特訓を開始しました。うちのオーナーはこれまでに何度も大会に出場していますので、ロースティングの場所に大会用のセットが用意してあるのです。5時に仕事が終わると、すぐにご飯を食べて移動。6時から9時まで毎日セットで練習です。週に一回は試飲会を兼ねて、実際のお客さんを呼んでパフォーマンスを披露しつつ、ジャッジをしてもらっていました。そんな練習を約2ケ月続けました。
フルーツの味のするコーヒー
さて、大会ではオリジナルのコーヒーも審査の項目にあります。最近のニュージーランドでは酸味と甘味が多く、フルーツ系の味のある豆が主流となっています。私はリンゴ、ドライ・クランベリー、そしてジャスミンティーなどの味をだすコーヒーを作りました。ちなみにこの大会で優勝した人のコーヒーはブルーベリーの味でした。ただ、フルーツの味がするとはいっても、シロップなどを加えるわけではありません。豆そのものが、フルーツの味や香りを醸しだすのです。バリスタがその微妙な違いを知り、味や香りが最も引き立つようにコーヒーを淹れるのが腕なのです。大会の結果はオークランド大会ではオーナーが優勝、私は2位、全国大会ではオーナーが3位、私は4位でした。大会の成果をカフェにも還元するというわけではありませんが、カフェではいろいろな種類のコーヒー豆を仕入れて、週ごとに一種類、お客さんにも楽しんでもらえるようにしています。
一人のバリスタとして
私は今後もこの大会に出ることを通して、自分の腕を磨いていきたいと思っています。こうしたカフェで働く人の中には将来、自分のお店を持ちたいと考える人もいるかもしれませんが、私はずっとコーヒーを淹れることにこだわりたいと思っています。お店を持って経営するのではなく、あくまで一人のバリスタとして、本当の美味しいコーヒーを提供していきたいと思っています。ゆくゆくはエスプレッソマシーン(オートマチックとマニュアルの設定を選べる)をマニュアル設定にして、自在に味を操れるようになりたいと思っています。