2月の行事と言えばバレンタインデーがある。しかし、今年に関する限り、2月14日をバレンタインデーで楽しんでいる暇はない。2月14日はアメリカズ・カップ開幕イヴ。アメリカズ・カップは2月15日に開幕し、チーム・ニュージーランドはブラックボートでスイスのアリンギを迎え撃つ!昨年10月1日から始まったルイ・ヴィトンカップは今年1月19日に勝者がアリンギに決まり、チーム・ニュージーランドはどのチームが勝ち残ってくるのかを静観していた。9戦のうち、先に5勝した方が勝ちというしくみのアメリカズ・カップでは、どちらかが一方的に強ければ、たった5レースで終わってしまう。前回大会はチーム・ニュージーランドが5-0でプラダチャレンジに圧勝したが、今回はどうなるのか?そこで、今回は本誌創刊の2002年1月号から、先月号2003年1月号までにこの企画「DO NOT UNDERESTIMATE NEW ZEALAND!」に登場してくださった、この大イベントのキーパーソン3人の方々が語ってくれた言葉を再編集し、来るべき2月15日から始まるアメリカズ・カップへの意気込み、期待と裏話を改めて紹介してみたい。
ロス・ブラックマン:Ross Blackman |
カリスマからポジションを引き継ぐ トム・シュナッケンバーグ(チーム・ニュージーランドC.E.O.兼デザイン・コーディネーター)からC.E.O.となってぜひ力を貸してくれと頼まれました。ヨットの世界からは足を洗うつもりでいましたし、このポジションはあまりに重い責任がのしかかって来ます。前回大会ではヨット界のカリスマ的存在の故サー・ピーター・ブレイクでさえもプレッシャーを感じたというポジションでしたので本当に悩みました。 ニュージーランド人にとってのアメリカズ・カップ オークランドでルイ・ヴィトンカップとアメリカズ・カップが開かれている事はとてつもない事なのです。前回大会ではニュージーランドに6億4千万ドル(約380億円)もの経済効果がありました。開催期間は5ヶ月間にもわたる他にはないスポーツイベントなのです。 |
トニー・トーマス :Tony Thomas |
二つの顔 1995年にチーム・ニュージーランドがアメリカのサンディエゴでアメリカズ・カップを奪取した直後、故サー・ピーター・ブレイクから直々に「アメリカズ・カップ2000年大会の組織委員長をやって欲しい」と頼まれました。 イベントとしてのアメリカズ・カップはアメリカズ・カップを保持しているヨットクラブが組織、運営する事になっており、そのヨットクラブはロイヤル・ニュージーランド・ヨット・スコードロンになります。私はロイヤル・ニュージーランド・ヨット・スコードロンに雇用される形になり、今回のアメリカズ・カップ2003では前回と同じポジションを引き継ぐ事になりました。仕事の内容はルイ・ヴィトンカップとアメリカズ・カップ2大会の運営、アメリカンエクスプレス・ヴァイアダクト・ハーバーの管理、2大会の広報活動、開会・閉会式の運営、もちろんスポンサー探しや資金集め、スポンサーの接待なども重要な仕事です。 さらに、今回はチーム・ニュージーランドのエグゼクティブ・ダイレクターにもなり、ブランド戦略、広報活動、スポンサー獲得など毎日朝7時から、12時間は仕事をしなければなりません。前回はチーム・ニュージーランドに関わっていませんでしたので、今回は仕事量が2倍になったようなものです。 アメリカズ・カップ2003におけるチーム・ニュージーランドのテーマは「LOYAL」 このCMを作るにあたり、私はマーケティングアドバイザーとして参加しました。今回のテーマとなる「LOYAL」という単語には「忠誠な」「忠実な」という意味があります。国を代表するスポーツチームが試合前に国歌を歌う時に横一列に並び、各選手は右手を左胸に当てます。そんなポーズをした人達が一列に並ぶCMです。南島最南端のインバーカーギルから始まり、ニュージーランドの海岸線を通って、オークランドにあるチーム・ニュージーランドのベースキャンプまで人の列が繋がり、最後にスキッパーのディーン・バーカーの顔のアップで終わるあのCMです。あの人の列の中には各都市の市長やスポーツ界の著名人なども含まれており、オークランドにいる人だけではなく、ニュージーランド国民全員がチーム・ニュージーランドを応援していることを訴える事が目的です。BGMにはニュージーランドの歌手デイブ・ドビンが唄う、故サー・ピーターが好きだったという歌「LOYAL」が流れています。このCMが考えられたのはチーム・ニュージーランドを去り、他のシンジケートで中心メンバーとなって、ニュージーランドからアメリカズ・カップを持ち去ろうとしているニュージーランド人セーラーに対して、チーム・ニュージーランドは未だに愛国心に溢れた多くのニュージーランド人に支えられていることを表現するためなのです。 |
ロス・モンロ :Ross Munro |
転機となったアメリカズ・カップ 1991年に「LINE7」の権利を得て以来、すぐにアメリカズ・カップのウエアを供給しようと決めました。ちょうど92年にアメリカのサンディエゴでニュージーランドにとって3回目のアメリカズ・カップへの挑戦ザ・ニュージーランド・チャレンジがありました。それ以来「LINE7」はアメリカズ・カップに参加するニュージーランドのチームにウエアを供給しています。 次の大会、95年は同じくサンディエゴでした。チーム・ニュージーランドがヤング・アメリカを破ってアメリカズ・カップを奪取しました。これで「LINE7」のイメージアップに弾みがつきました。国を挙げてのサポートは「LINE7」の売り上げにも大きく反映しました。 2000年のオークランド大会はウエア供給に関する契約金が跳ね上がり、大きなリスクを背負ってしまったと感じました。しかし、結果的にチーム・ニュージーランドがアメリカ以外で初めてアメリカズ・カップを防衛した歴史に残るイベントでもあったのでニュージーランドの人達のみならず、世界中の観光客もチーム・ニュージーランドのウエアを買ってくれました。 そこで今度の2003年大会です。アメリカズ・カップはニュージーランドで行われる最も大きなスポーツイベントです。「LINE7」がチーム・ニュージーランドをサポートしないわけがありません。他のチームをサポートする世界中のスポーツウエアやヨットウエアを相手にチーム・ニュージーランドと一緒に戦いたいと思います。ニュージーランドは「LINE7」のホームグラウンドです。地の利を生かして有利に戦いを進められると思います。 生活の中に溶け込んでいる海が「LINE7」を作り出す。 ニュージーランドは最上級のヨットウエアを作るのにふさわしい国だと思います。それは、海岸線が長く海に近い生活をしている事、そのうえセーリングが生活の中で多きな位置を占めており、余暇をどう過ごすか、収入をどう使うかという事に海が大きく関わってきているからです。これらが本当の意味で海洋国を意味すると思います。オークランドは4世帯に一隻のボートないしはヨットがあると言われています。これほどの要素を兼ね備えた国は他にどこもありません。 また、セーリングの環境やスポーツへの関心が高い事もあげられます。ニュージーランドのヨットマンによる数々のヨットレースでの輝かしい記録は世界中でも有名です。また、ボートやヨットの建造技術も世界でトップクラスにあります。ですから、マリン業界が国を挙げた一大産業となっています。 |