Vol.51 Career up in NZ -ニュージーランドでラグビーウェアショップ勤務-


オークランドシティの目抜き通りQueen Stのダウンタウン側の入り口に門のように両側に店を構えるラグビー専門店Champions of the World。ラグビー王国ニュージーランドの象徴とも言えるだろう。そのChampions of the Worldが昔、ラグビー専門店Canterburyだった頃からターナー三千枝さんは働き続け、今年で16年目となる。キウイ女性よりもニュージーランドを象徴するこのラグビー専門店を知る三千枝さん。『女性のためのラグビー観戦』をテーマとしたCareer Upに登場して貰うのに最も相応しい日本人女性は、三千枝さんの他には考えられないだろう。それに加え、三千枝さんは初代ワーキングホリデーメーカーでも ある。1985年から始まった彼女のニュージーランド生活の話に重みさえ感じた。Champions of the Worldの店内で三千枝さんを見たことがある人は多いだろうが、彼女がそれほどまでにニュージーランド経験が豊富なことを知る人は少ないだろう。それは彼女の高ぶらないフレンドリーな人柄がそう思わせるのかもしれない。そんな三千枝さんが、ラグビーに詳しくない女性も含めたE Cubeの女性読者ために、ニュージーランドのラグビー観戦についてとても分かり易く解説してくれたのだった。

ラグビーウェアショップ・アシスタント・萩野谷(ターナー) 三千枝さん 東京都出身。衛生短大看護学校卒。保健師学校卒。保健師の資格を取得。東京ガスで保健師として勤務し、その後保健所で働く。1985年にニュージーランドへ渡航。免税店やその他の小売店でのショップアシスタント職を経て、15年前にChampions of the Worldの前身Canterburyに転職。現在は、ワイヘキ島に住みパートでChampions of the Worldで仕事をする。お年寄りのためのボランティア活動も空いた時間で行っている。

初代ワーホリメーカー

看護学校を卒業した後、保健師学校へ通って保健師の資格を取得し、企業の中にあるクリニックに保健婦として1年間勤め、その後保健所に転職し、そこで約6年半働きました。私が29歳の1985年7月1日にワーホリ制度が開始されたので、その直後にワーホリ制度を利用してニュージーランドへ来ました。実は、以前からニュージーランド移住を考えていたので、その3ヶ月前にニュージーランドに下見のために来ていました。その旅行中に丁度、日本とニュージーランド間のワーホリ制度の取り決めを行うために元中曽根首相がニュージーランドを訪問していて、その時にワーホリ制度が開始されるという情報を入手しました。それで日本に戻り、手続きをし、ワーホリでニュージーランドに渡航しました。
ニュージーランドに来て直ぐに英語学校を探していたのですが、当時は3校くらいしか英語学校が無い上に、見学へ行くと殆どの生徒が日本人で、日本語で話をしていたので、英語学校に通うことを迷っている時に、友人が私のために免税店の仕事を見付けてきてくれました。その当時、免税店はオークランドには現在の有明レストランの 場所に1件しかありませんでした。それは、現在のDFSギャラリアの前身の免税店『マイルス・アンド・カーロウ』というお店でした。私は英語力に自信がな くて戸惑っていましたが、友人が面接にまで付き添ってくれて、採用となりました。そして、その英語がまだ分からなかった時に職場で知り合ったのが、現在の 主人でした。それからその免税店に3年くらい勤めた後、辞職し、しばらく主婦をしていました。
そんなある日、友人から電話がありました。ラグ ビー用品店カンタベリーで仕事があるので働いてみないかと言われました。カンタベリーとは現在のチャンピオンズ・オブ・ザ・ワールドの前身です。そして面 接へ行き、カンタベリーで働く事となりました。今から15年前のことです。5年前にチャンピオンズがそのカンタベリーのお店を買い、現在の名前に変わりま した。でも、店内は以前のままです。

女性も入れるオープンな世界へ

働き始めた頃は、ラグビーのことは全く分かりませんでしたが、同僚がみんなラグビーに詳しかったので、色々教えて貰っているうちに段々と分かるようになり、またラグビーが好きになっていきました。昔と比べて、お店の商品が随分変わりました。昔のジャージは幅がなくて長細くて、素材に綿が少し多めに入って いたので洗濯するとよく縮みました。現在は素材がポリエステルで丈が短くなりました。そして昔のユニフォームには白い襟が付いていたのですが、試合の時に 襟を掴まれないように襟が無くなりました。サイズも豊富になり、以前はニュージーランド製だったのですが、いつ頃からか中国製になりました。お洒落面でも、以前は女性用商品がなかったので、私も男性用の商品を着ていました。現在は男性用を着なくても、女性用があります。2003年のワールドカップの頃から女性ラグビー ファンが増加してきたので、その頃から女性向けの商品が増えました。そして昨年、ラグビーガールの商品の販売がスタートしました。ニュージーランドは女性のラグビーで も世界一で、自信を持ってプレイされている女性プレイヤーが増えてきたのも最近です。また家族でラグビー観戦する人も増えました。近年、ラグビーは男性だ けの閉鎖された世界から、女性も入れるオープンな世界へと変化したようです。

観戦をより楽しむために

私よりも年上の女性から、ラグビー観戦に着飾っていこうか、と言われることも増えました。着飾り方ですか?最低限でもそのチームの色を着て頂いた方がいいですね。オールブラックスでしたら黒系統の服。オールブラックスのジャージを着ていなくてもいいので、色を合わせて下さい。そうすると、座っているだけで どちらを応援しているのかが分かります。地元チームを応援する時もチームの色に従って、対戦相手に無いチームの色を服に入れて観戦に行って下さい。また、 応援チームの色の服を持っていない人は、フェイスペインティングをする人もいます。フェイスペインティングの方法は、ただ単にその色を塗って下さい。後は 何を書いてもいいです。観戦に行かれるキウイの家族は、子供にチームの色を着せて色を合わせています。企業の接待だと思いますが、ラグビー観戦をされる企業も多く、まとめて大量にユニフォームを買われます。
ラグビー場では服の色で見方だと分かることが楽しみのひとつでもありますが、スポーツパブ や家のテレビで観戦する時も、キウイは着飾って気分を盛り上げて観戦します。そして、キウイのラグビーをよく知っている方と一緒に観戦に行くとより楽しめ ると思います。観戦する試合については、地元のチームが地元で行う試合がやはり最も観客が多いので、盛り上がって楽しめると思います。後はテレビや雑誌で 好きな選手を作って行くといいと思います。そうするとその選手から広がって見所が増えます。そしてラグビーが分かるとキウイとの輪も広がります。

ラグビー観戦者の1日の行動パターン

最もチャンピオンズ・オブ・ザ・ワールドのオークランド店が忙しい日は、ラグビーの試合がオークランドである日です。ラグビーファンの1日の行動は、先ず 午前中にチャンピオンズ・オブ・ザ・ワールドの店に来ます。着る物を買う方もいらっしゃいますし、家族で来られる方は旗を買ったり、家庭の経済状況にもよりますね。ラグビーファンで、レギュラーで店に来られるお客様は、1シーズンに1つくらい新しい商品を購入されます。試合の日は、やはりチームのジャージやTシャツが初めに売れてしまいます。特別な試合ですと、チケットも高いのですが、その試合を観戦するために海外から来られるお客様もいます。海外に住む ニュージーランド人でしたら、出身地を応援するために、お金に関係なく商品を買っていかれます。お土産にもなりますしね。
商品を買った後は、それらを着飾って、午後3時か4時ごろまで街の中をぶらぶらします。相手のチームのサポーターも街を着飾って歩いているので、気分が高まります。その後、ラグビー場へは 電車かバスで移動します。試合は7時半くらいから始まるので、ラグビー場の周りで5時ごろから食べたり飲んだりして腹ごしらえをして観戦に行きます。会社の招待でしたら、ラグビー場から離れた場所で食べて、そこからバスで引率されて行きます。ラグビー場の外でも、チャンピオンズ・オブ・ザ・ワールドはバンで商品を販売しているので、ラグビー場に来るまでに商品を購入する時間の無かった人は、試合直前にここで商品を買って着飾って試合観戦に行かれます。試合が終わって帰る時は、交通機関が混むので、余韻を楽しみながらシティの方までみなさん歩かれていますね。この様に、ラグビー観戦は、1日がかりのイベントです。

2011年ワールドカップに向けて

近年で特に忙しかったのは、やはり昨年のライオンズ戦でした。お店のレジは通常は2台ですが、ライオンズ戦の時は5台出し、レジが1日フル活動していました。チャンピオンズ・オブ・ザ・ワールドは国内に10店舗あるのですが、ライオンズ戦の時は他の店舗からも手伝いに来てくれました。2011年にはワールドカップがあるので、ライオンズ戦の経験を活かしたいと経営陣は言っています。というのは、近年女性ファンが増えて、ライオンズ戦でも女性用のジャージが 最初に売り切れになりました。そして、ライオンズ戦の時の商品に、3歳から8歳の子供用の商品が無かったのですが、その商品があったらもっと売れたと思います。子供に着せたい親が多いようでした。私の今後の夢ですか?そうですね、私も年を取ってきましたし、私がここで働いている間に引退された選手も多くなってきましたが、次の2011年にあるラグビーワールドカップまでどうにか頑張って続けて、ワールドカップを見届けたいですね。

各国のサポーター

フランスはラグビーが盛んなのですが、フランス人はオールブラックスに尊敬の念を持っているようです。南アフリカ人は、もう少しライバル意識が強いですね。オーストラリア人はもう大変ですね。オーストラリアとニュージーランドは兄弟関係なので、お互いに絶対に負けたくないという意識がかなり強いです。その勝ち負けが、そのまま翌日のお店の雰囲気にも繋がります。ワールドカップで1999年にオーストラリアが優勝した時は、オーストラリア人が店に来て、オールブラックスは負けたのだからチャンピオンじゃないだろう、とチャンピオンズ・オブ・ザ・ワールドという店の名前にケチを付けて行きました。この名前はおかしい、 名前を変えろ、とよく言われました。その次のW杯の2003年はイギリスが優勝したので、今度はイギリス人が同じように言ってきました。オーストラリアは 兄弟でも温かみがある関係ですが、イギリスは兄弟でももう少し冷たい関係ですね。ニュージーランドは元々イギリスの植民地でしたし、ラグビーも元はイギリスのスポーツなので、ライオンズ戦では、ニュージーランドのような田舎の国に負けるのはプライドが許さないという意識があるように感じました。

カテゴリ:ラグビー
各種法律や移民局の規定等は改定されている場合があります。詳しくはお問い合わせください。

お問い合わせはこちら