毎週土曜日午後5時半からTV3で放送されている「Gone Fishin」。その中のコーナー、「Derek the Chef」で手早く、美味しそうな魚料理を披露してくれるデレク・ロバートソン。彼は ニュージーランドで最高の設備を誇る料理・ホスピタリティ専門学校North Shore International Academyで講師を務める。ステンレスが輝くプロの厨房で、夕べ釣って来たばかりの鯛や伊勢海老を使い、本誌の為にモダンなクリスマス料理を披露してくれた。食材や釣りの話になると、彼の目がキラキラと輝く。常に手を動かし、調理をしながら、材料やテクニックの説明をしてくれる。まるでテレビの料理教室のように、手も口も休めずに動く。そして、見事なスリー・コースのクリスマスディナーを調理しながら、にこやかにインタビューに答えてくれた。
Derek Robertson
ダレック・ロバートソン
North Harbour International Academyシェフ講師 / Derek the Chef
ダニーデン出身。国内外のレストランでシェフとして活躍後、シェフ講師としてキャリアを積む。同時にパワーボートレースのTV解説も務め、TV3 Gone Fishinにレギュラー出演。著書はGone Fishin の主役Graeme Sinclairと共著のクックブックが2冊。2003年Chef of the Year賞を受賞。マイケル・ジャクソン他多くのセレブの為にも調理の経験を持つ。
2005年クリスマスに相応しいメニューとは
皆さんの為に、今日は3品を考えています。まず、アントレは「Treasure from the Sea」と題されたクレイフィッシュ、サーモン、まぐろ、そして鯛のお刺身風。そして、メインにはサーモンのグリルとスキャンピのリゾット、アスパラガス添え。そして、ハーブをふんだんに使ったミックスサラダです。
まずは、お刺身から作りましょう。このクレイフィッシュは夕べワンガパロア沖で取って来たばかりなんです。まだ生きていますよ。この鯛も、夕べ釣ってきたばかりです。新鮮でしょう?
NZの伝統的なクリスマスディナーといえばハム、七面鳥、ラム、チキン、グリンピース、ジャガイモとサラダでしょう。でも、我々の食生活は変わって来ています。シーフードやサラダなどで、軽くても豪華に食卓を飾ることができます。私の提案する2005年度のクリスマスディナーはライトで、さわやかな味わいです。彩りを考え、クリスマスらしく赤や緑の食材を選びました。
我が家のクリスマスは家族がみんな家に集まります。前の晩に釣りに出かけ、朝食をとった後、ご馳走を用意します。我が家にはバーベキューが3台あります。中華鍋、ロースト用、そして普通のグリルです。全てがフル回転になります。その日は午後3時くらいから食べ始め、食べる物が全てなくなるまで食べ続けます。クレイフィッシュや鯛など、新鮮な魚をたくさん用意し、バーベキューやスモークにします。兄妹や友人たちも集まり、それぞれ料理を持ち寄ります。色々な国籍がいるので、料理も多国籍です。
私は、クリスマスの日は夜中の3時頃から起きて調理を始めるんですよ。子供達がまだ寝ている間に、ご馳走の支度を始めます。ニュージーランドの伝統的なクリスマス料理というよりも、我が家の定番のクリスマス料理を作ります。子供達の味覚が豊かに育つように、様々な味わいを体験させてあげたいと思うのです。
ツリーは毎年クリスマスの12日前に飾り、12日後に取り外します。クリスマスプディングは毎年8月に作ります。これは子供達との共同作業です。子供達は順番に小指でケーキ生地を混ぜ、混ぜ終わったらその指をなめて味見をします。これで、彼らも作ることに参加したことになるからです。ニュージーランドの伝統で、コインを一つプディングの中に混ぜ込んで、それを食べ当てた人は何かをもらえるのです。8月に作ったプディングはクリスマスまで保存しておくと、ちょうど味が染み渡って、美味しくなるのです。
また、毎年必ず作るのはトマトとバジルのペスト味の七面鳥のドラムスティックをバーベキューしたものです。これが子供達の大好物なのです。でも、これは年に一度しか作りません。あとは、クレイフィッシュをバーベキューして、大きなラムのローストをバーベキューします。
飾り付けにはアイビーの葉っぱや、色とりどりのフルーツでテーブルを美しく飾ります。テーブルクロスは必ず純白のものを選びます。クロスに柄があると、料理が映えないからです。我が家では、あくまでも料理が主役なのです。
とにかく、25日は食べる物がなくなるまで、一日中飲み続け、食べ続けるのです。
美味しいものを作りたい!
私が料理をしたいと思ったのは、母が料理下手だったからなんです。私が子供のころ、母はキャベツを20分も茹でていました。お肉も茹でていました。当時はそれが普通だったのですが、どのような味だか、想像できるでしょう?そこで、なんとかして美味しいものを作りたい、と思ったのです。テレビの料理番組を見たり、一流のシェフたちを訪ねたり。ニュージーランドや海外のレストランで修行を重ね、シェフとしてニュージーランドに戻り、様々なレストランのヘッドシェフとして仕事をしました。
子供が生まれた頃、レストランではなくて料理講師の道を選びました。レストラン業界では週に7日、夜中まで働くのは当たり前です。週末は必ず仕事です。講師は週に5日、昼間の仕事です。週末は子供と過ごすことができますし、大好きな釣りに出かけることもできます。
シェフのトレーニングスクールで講師を務めた後、3年ほど前からここノースショア・インターナショナル・アカデミー、料理部門の最初のシェフ講師になりました。私はこのキッチンのデザインにも携わりました。私がスタートしたときはまだ空っぽの空間だったのです。そして調理器具の配置等を決めたのも私です。今では6人のシェフ講師がいます。
インターナショナルな学生が多いこの学校で料理を教えていると、学生達の国の食文化を理解することが必要になります。私は生徒達からは色々なことを学びます。そして、彼らから学んだことは、私の食卓を豊かにしてくれます。私は彼らに伝統的な料理の基本を教えます。お互いに得ることがある、良い関係です。
14人の学生が現在私のクラスで学んでいます。コースの初めの数週間は、ステップバイステップで丁寧に教えます。まずデモンストレーションをし、それを見た後、生徒達が自分たちでやってみます。それができたら、次のステップのデモをします。10週目を過ぎると、レシピを渡し、宿題としてよく読ませます。そして、まだやった事のない部分だけ、デモをします。
各学生が、最初から最後まで自分で料理を仕上げます。そして、盛りつけをし、最後に試食をします。私も全ての学生の作品を試食します。私の言った通りにしないと、皆違う味に仕上がってしまいます。そして、それぞれにどこを直せばよいのかを指示するのです。
一昔前まで厨房は男の世界でした。でも今は女性もいますし、様々な国籍もあります。それぞれが新しいアイディアを持ち込んでくるのです。特にNZの食文化は様々な国の影響が見られ、これは素晴らしいことだと思います。
料理三昧、釣り三昧
テレビの仕事は3年ほど前に始めました。番組では毎回船を出して、皆で魚釣りに出かけます。そして、釣れたものをその場で調理するんです。私のコーナーは3分半。ぶっつけ本番です。
「Gone Fishin」は料理と釣りが何よりも好きな私にとって、ぴったりの番組です。番組のため以外にも、毎週末魚釣りに出かけます。コロマンデルのタイルアに別荘があり、毎週末、釣りに出かけます。これが私が釣った、一番大きな鯛なんですよ。20キロあります。大きいでしょう?これは食べずに壁に飾る予定です。
偉大なシェフの必須の条件は料理に対する「パッション」です。その一言に尽きます。料理のことを常に考え、呼吸し、生きなくてはいけません。仕事以外でも、私の頭の中はいつも料理のことでいっぱいなんです。家では女性誌を読みます。いろんな料理のアイディアが載っているからです。たくさんのクックブックを読むのが好きです。常に、新しいアイディアを探しているのです。また、夜中にレシピを考える事も度々です。このように情熱を持っていれば、必ず成功することができます。
そろそろメインディッシュが出来上がります。リゾットを型に入れて、丸く盛ります。その上にサーモンを盛りつけます。ソースはアボカドオイルに赤、黄色と緑のピーマンを浸した物です。これはクリスマス色なので選びました。サーモンの深いオレンジとアスパラの緑、ソースの赤、黄色と緑で美しい彩りが出来上がりました。さあ、召し上がって下さい。