現在、オークランドにあるカフェで働いている富田真紀さん。毎日、朝早くから出勤して地元キウィで混む、忙しい職場でお客さんと接している彼女が、海外に出る初めてのキッカケはオーストラリアにワーキングホリデーで行ったことだった。
カフェスタッフ:富田 真紀 さん ニュージーランドのカフェで働くことが出来て毎日が充実しています 1974年生まれ。神戸女子短期大学英文学科卒業。01年 4月オーストラリアにワーキングホリデーで行った後、02年11月再びワーキングホリデーでニュージーランドへ。オークランドにあるカフェ Pavilionでアルバイトをする傍ら、時間があればカフェ巡りを楽しんでいる。カフェに入ってオーダーするのはミルクのたっぷり入ったラテ。真紀さんがお気に入りのカフェのポイントはコーヒー以外にもケーキなどのデザートメニューが充実していること。 |
「私は短大を卒業してからずっと海外に行ってみたいと思っていました。高校の時に英語を勉強することが楽しくなり、短大の専攻を英文科に決めるなど、漠然ですが英語をしゃべれるようになれたらいいなあと思っていたのです。ですが、短大卒業後、一人暮らしをしていたこともあり、仕事をしていても思ったようにお金を貯めることができず、行動に移れないでいました。
それから数年すぎた頃、オーストラリアにワーキングホリデーで1年間生活して英語を上達させて帰国した友達に会うことがあり、海外での生活、英語の勉強の仕方や苦労などいろいろな話を聞くことができました。その友達自身大変なことも多く、とても努力をして英語を上達させることができたのだと感じました。そのとき、目的を成し遂げ、輝いて見える友達をうらやましく思う反面、時間に流され行動できない自分を悔しく思いました。友達に会って、このままではいけないと思ったのです。ですから、本屋さんでオーストラリアのガイドブックを購入して、ワーキングホリデーのビザのことを調べるなどして、01年4月オーストラリアにワーキングホリデーで行くことにしました。航空券だけを取って、スーツケースを引きながら、オーストラリアのサーファーズパラダイスに向かいました」
ワーキングホリデーでオーストラリアに行っていた友人が暮らしていたと言うことからサーファーズパラダイスで生活を始めた真紀さん。
同じようにワーキングホリデーで来ている友人から情報を得たりしながら、友達もできていった。
「オーストラリアでは、仕事をして英語を上達させようと考えていました。英語学校に通って勉強するより実践で覚える方が身に付くのではと考えたからです。職種もお土産屋さんや日本食レストランではなく、現地のカフェで働きたいと思っていました。
というのも私はカフェが好きでした。
日本では雑誌などでカフェが紹介されたり、街に新しいカフェがオープンすると足を伸ばしていました。店の雰囲気がおしゃれだったり、オリジナルのケーキやブランチなどのメニューを提供するカフェが増えていったという時代の流れもあったのだと思いますがカフェに行くことで、海外の雰囲気を感じられるような気がしていたのかもしれません。
履歴書を持って、一軒一軒飛び込みでカフェに入っていきました。サーファーズパラダイスの街はあまり大きくないため、隣のブロードビーチという街まで移り、仕事探しを続けました。そこで少し強引ではあったのですが、お客として店に通い、仲良くなって自分を売り込むという作戦が功を奏し、仕事を得ることができたのです。そこでの仕事はサンドウィッチの仕込みの手伝いなど希望していたものとは異なりましたが、現地の人と一緒に働けることで、とても満足でした。
その後、しばらく働き、旅行などを経て、帰国直前には、英語を少しわかることができ、コミュニケーションを取ることが楽しいと思うようになり、日本に帰国しました」
帰国後、英語を忘れてきている自分に気がついたという真紀さん。
なるべく時間をあけずにもう一度海外に行きたいと思い、週末は朝まで寝る間を惜しんで、バイトを掛け持ちでこなし、オーストラリアから帰国してから1年も空けず、02年11月ニュージーランドに来た。
「オーストラリアと近かったこと、物価や治安がいいという理由からニュージーランドに決めました。2回目のワーキングホリデーということもあり、どこに行くかということより、1年という限られた時間を以前よりもっと有効に使いたい、英語をもっと上達させたいという気持ちが強かったです。
ですが、時間が貴重だと思えば思うほど、英語を勉強するために学校を探したり、旅行をするなど、いろいろなことにチャレンジしてみようとしていたら、広く目を向けすぎて、中途半端になっていました。そこで、反省して、一つだけでいいから実現させてみようとオーストラリアでのカフェで働きたいという思いがよみがえってきたのです。
気がついたら半年が過ぎ、何もしていない自分に焦りもありました。何も成し遂げずに日本に帰ることはできないと思うと、気持ちを入れ直して、次の日からカフェを回り始めました。
オークランドには至る所にカフェがあります。シティーはもちろん、ポンソンビー、マウントイーデン、パーネル、ミッションベイなど、その街の雰囲気にあった、地元のキウィで混むカフェが多くあります。ここで働けたらというだめもとでカフェに飛び込みで入っていきました。
募集をしていますか?と履歴書を持って、毎日、聞いて回りました。その中のひとつPavilionというカフェに入って時でした。初めて店に行ったときは店の人にちょうど人を雇ったばかりだからと断られたのですが、念のために渡しておいた履歴書からマネージャーが後日連絡をくれたのです。電話の後すぐに仕事に必要な黒い靴や服などを用意して、面接に行きました。そして、次の日から働くことになったのです」
Pavilionはオークランドのダウンタウン、ショートランドストリートにある「VERO CENTRE」のロビーにあり、テナントで入っている大手の保険会社、証券会社、弁護士事務所などの人たちが利用しているという。
「朝7時から営業を開始して、ブレックファストを提供して、終わったと思ったら10時くらいからティータイムの時間です。その後は、ランチ、午後のティータイムと4時の営業が終わるまでひっきりなしにお客さんが来ます。カフェの入っているVERO CENTREには約2500人ほどの人が働いています。オフィスビルだけにお客さんのほとんどがビジネスマンです。広々とした空間を利用して商談や会議などをしているようです。
ですから、店ではプライバシーを考慮した席の配置や固定客のためにランチメニューを定期的に入れ替えるなど様々な配慮しています。
お客様へのサービスもその中の1つです。従業員への教育も徹底して行われているのです。初めて働いた日にはお客様へのサービスの仕方を1から教わりました。お客様の右側からオーダーの品を出したり、さげることや皿の持ち方などの基本的なことからです。また、職場は英語がしゃべれて当たり前の世界です。英語がろくにしゃべることのできない店員にオーダーするのはお客様のストレスになることですし、お客様に失礼に当たると思います。ですから、 Pavilionではきちんと英語がしゃべることができなけば、オーダーを取らせてもらえません。料理やコーヒーを運んだり、皿を下げることしかできないのです。そんなことがビルで働くビジネスマンに1日に何度も足を運ばせている理由だと思いました。ですから、働き初めて、仕事を覚えてきた今でも英語面、サービス面ともに厳しい指摘を受けます」
カフェでの接客についてはもちろん、マネージャーが入れるコーヒーについての興味も増えていったという。
「ニュージーランドのカフェでは、一般的にコーヒーを入れる際、エスプレッソ・マシンと呼ばれる専用の器具を使い、お湯に圧力を加えて強制的にコーヒー豆の粉の間を通り抜けさせ、コーヒー豆の成分をお湯の中に抽出します。すべてのコーヒーはその抽出されたブラックコーヒー(エスプレッソ)が基本となるのです。エスプレッソに水蒸気でミルクを膨らませて作った泡とミルクを混ぜ、フラットホワイト、ラテ、カプチーノなどのバリエーションを作っているのです。働き始めてから、かねてから興味のあったコーヒーについて詳しくなりたいと思っていました。
そこで先日マネージャーにお願いして、コーヒーについての講習をしてもらったのですが、何気なく飲んでいるコーヒーには素になるコーヒー豆が何百種類もあり、その成分が複雑に組み合わさって、酸味や苦みなど様々な味と香りを生み出していることを知りました。コーヒー豆を挽くときの粗さや湿度、コーヒーに入っている牛乳の泡などすべてのことがコーヒーの味や香りに作用しているのです。
また、カフェで働いているときに1日に何回も利用されるお客様がいて、カフェインが入っているのに、そんなに何杯もコーヒー飲んで大丈夫なのかなと思っていたのですが、ペーパーフィルターを使って入れるドリップ・コーヒーとエスプレッソを比べた時に、カフェインはドリップ式の方が多いことを知ったので少し安心しました。エスプレッソはコーヒー豆を深煎りにする過程でかなりの量のカフェインが飛ぶ上に、エスプレッソでは短時間で抽出するため余り溶け出さないということからドリップ・コーヒーに比べて一杯当たりのカフェイン含有量が少ないのだそうです。
一見簡単そうに入れているコーヒーですが、マネージャーからいろいろなことを教わり、実際に入れてみたのですが、コーヒーの粉をセットするときに多すぎたり、少なかったり、牛乳の泡を作るときは容器から牛乳があふれてしまったりとうまくいきませんでした。 私が入れるコーヒーを店で出せるのには、まだまだ時間がかかりそうです。
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