Vol.200Career Interview

会計士 水野寿里さん

パートナーとの出会いがきっかけで ニュージーランドに移住してから7年 厳しく長い道のりを乗り越えて 公認会計士の夢はもうすぐそこです


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北海道出身。6年半のオーストラリア滞在で現在のパートナーに出会ったことをきっかけに、ニュージーランドに移住。日本食レストランでのアルバイトやITサポートの仕事を経て、現在は会計士として勤務。ニュージーランドの魅力や会計士についての情報を伝えるべく、ブログ(https://haruo-nz.com)を更新中。

帰国直前 パートナーとの出会い

 小学生の頃に英会話教室に通っていたことから、もともと外国というものに興味はありました。「いつかは海外に行ってみたい」と思っていて、オーストラリアへのワーキングホリデーという形で行動に移したのは21歳の時。大学生の頃に出合ったスキューバダイビングを楽しむために、観光地として有名なケアンズを選びました。
 オーストラリアの海は本当にきれいで、感動したのをよく覚えています。私が生まれ育った北海道では基本的に食べられる魚しか見られないので、新鮮な気持ちでした。ほとんど先の見通しが立っていないノープランのワーキングホリデーだったのですが、ツアーガイドとしての仕事を見つけて、ニュージーランドでいうところのワークビザを取得したんです。
 最終的には永住権まで取得して約6年半という月日をオーストラリアで過ごした後、現地の大学に進学するための費用を貯めようと、一時的に日本に帰国することに。それで職場に退職の意を伝えたのですが、一体なんの縁か、ちょうどその次の日にニュージーランド人である今のパートナーと出会ったんです。それがきっかけで、大学進学ではなくニュージーランドに移住することになりました。
 ニュージーランドを訪れた時の第一印象は、どこか北海道と似た雰囲気を持っているということ。動物がいて、海も山もすぐそこにある。自然がすごく近くに感じられる国だと思います。

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ハミルトンに移住 会計学を専攻

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 ニュージーランド移住後は、オークランド、ウェリントン、クライストチャーチに次いで第4の都市といわれるハミルトンで生活を始めました。また学校に通い直したいと思っていたので、日本食レストランでアルバイトをしながら、Waikato Institute of Technology(通称Wintec)に入学するための準備を開始しました。
 進学にはIELTSのスコア6.0(オーバーオール)を取得する必要があったのですが、英語をしっかり勉強したのは、オーストラリアのワーキングホリデーで語学学校に通っていた数週間のみ。結果的に基準には満たなかったものの、学校の入学事務局に相談してみると、学校付属の語学学校で独自に開催している英語テストを受験してみてはどうかというアドバイスをもらったので、挑戦することにしたんです。
 運が良いことになんとか入学することができ、そこから約2年半という時間を投資して、ビジネスを専門に学びました。コースの中にあったマーケティング、マネジメント、アカウンティング(会計学)と3つの専攻のうち、会計士を目指そうと思ってアカウンティングを選択しました。
 オーストラリア滞在中、ツアーガイドのほかにITサポートの仕事を経験していたことからITコースを受講することも考えたのですが、テクノロジーは時代によってどんどん変わっていくもの。それに合わせてずっと勉強を続けていくのはとても大変なことでしょう。
 もちろん、アカウンティングも専門知識が必要ですから努力はしなければなりません。ただ、ITほど移り変わりが激しくなく、割と安定している会計士という職業を目指せるアカウンティングを学ぶのがベストだと思ったんです。私が会計士になろうと考えたのは、もともと数字や計算が好きで自分に向いていると感じていたからということもありますが、コストパフォーマンスが良いという部分もかなり大きな理由の一つになっています。

留学生活成功の秘訣は「とにかく聞く」

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 授業では税金や法律についての知識を養ったり、財務諸表について学んだりします。そこで大変だったのは、日本人が1人きりだったということ。それこそ最初は分からない英語だらけで、授業の内容よりもまず、英単語を一つ一つ調べるところから始めました。
 特にアカウンティングでは、税金や企業などに関する法律用語も頻出します。これが意外と、日本語にわざわざ訳した方が分かりづらかったりして、思わず「訳が分からない!」と頭を抱えたくなるものばかり。だから初めて見る英単語の多くは、英語のまま調べて覚えるようにしていました。
 もう一点、海外の学校ではレポートやエッセイというような、論文形式の課題が日常的に出されます。語彙や文法はもちろんのこと、書式や言葉遣い、句読点の使い方まで、日本とは勝手が違うのでどういった書き方が適切なのか分からず、戸惑うことだらけでした。
 まずはインターネットで調べてみるのですが、どうしても分からないときにはとにかく先生に聞きに行っていました。"分からないことはその日のうちに解決する"というのが、当時の私が掲げていたモットー。私の場合は、そうしているうちに自然と授業に付いていけるようになっていったんです。努力の結果として、Wintecに在籍していた3年間は毎年、アカウンティングの最優秀学生として賞をいただくこともできました。

大勢がふるいに掛けられる就職活動

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 ひとえに会計士といっても仕事の幅はかなり広く、小さい会社だと財務書類を調べたり税務業務を行ったり、さらにはコンサルティングをしたりなど、多岐にわたる業務を任されることもあるでしょうし、これが大企業になると、部署ごとに税金担当・コンサルティング担当といったように分業化されていることも少なくありません。
 会計士になるためには、大学2年生になると会計事務所(アカウンティング・ファーム)でのインターンシップに申し込み、企業側から戦力になると判断されればそのまま内定・採用といった流れがほとんど。もしくは、最終学年で一斉に掛けられる新卒用の求人募集に応募する人も多くいます。
 ただ、後者の場合は競争率も驚くほど高く、新卒募集という部分は少しだけ日本の就活状況と似ているかもしれませんが、選考プロセス中にはアクティビティーをしたりグループワークに取り組んだりともっとクリエイティブなイメージです。書類審査に通ったら電話面接、それがクリアできれば本面接といった感じで、長期的な戦いになります。
 適性検査と呼ばれるテストもあって、内容は心理テストのようなクイズから計算問題までさまざま。中でも特に難しいのが論理的推理能力テスト(Logical Reasoning Test)です。これが本当に難しくて、結果が悪いとすぐに切られることになるので結構な人数がふるいに掛けられてしまうんです。それこそ、英語ネイティブであるローカルの人たちですら口をそろえて「難しい」と言うほどでした。
 私はというと、当時インターンシップのことなどを知らなかったということもあって、就職活動も残念な結果に。それでコース修了後の1年間はWintecのITサポートとして働き、その後インターネットで見つけた仕事に再度応募したところ、日本でいうところの国税局に当たる組織に採用してもらいました。今は税務調査を主に担当しています。

狭き門を突破し公認会計士を目指す

 今私が目指しているのは「公認会計士」になること。公認会計士という資格を取得するためにはただ学校で専門知識を養っただけでは駄目で、大学卒業後には会計士の認定団体から提供される授業を別途受講しなければならなかったり3年間の実務経験が必要だったりと、かなり狭き門になっています。
 全ての条件をクリアして公認会計士と呼ばれるようになるには、早い人でも大学卒業後3年ほどはかかるでしょう。中には大学在学中からすでに実務経験があるような人もいたりしますが、そういった人たちでも2年はかかるようです。
 会計の知識というのは、どのような業界でも役立ちます。公認会計士の資格を保持する人たちの中には会計とは全く関係ない分野の会社を経営している人もいますし、会計事務所を立ち上げる人もいる。かと思えば大企業で財務全般の責任者になる人もいて、多様なキャリアパスが用意されているのも良いところです。
 幅広い選択肢で多彩なライフプランが想定できる会計士という職業だからこそ、今後もいろいろなことに挑戦していきたいと思っていて、公認会計士として認定された後にはまた大学で勉強し直し、移民アドバイザーやIT関連の資格を取得するつもりです。
 そうしてたくさんの経験を積んで、最終的にはいつか自分のビジネスを展開したいと考えています。

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