品質も価格も世界最高の牛肉である和牛。和牛のおいしさの秘密はもちろんのこと、おいしい肉の見分け方や食べ方、どう育てられた和牛がおいしくなるのかなどを取り上げていきます。
際立つ和牛のおいしさ
圧倒的なおいしさで知られる和牛(Wagyu)は、なぜこんなにもおいしいのでしょうか。人の味覚は多様で、人によって好き嫌いも違うものです。牛肉においても、コクのあるサシの入った肉が好きな人もいれば、どちらかといえばあっさりとした赤身が好きという人もいます。しかし、全国肉用牛振興基金協会が実施した和牛肉と輸入牛肉、ホルスタイン牛肉を比較する調査では、約7割の人が和牛を最もおいしい肉に選んでいます。
和牛の香り
和牛の脂は甘くてうまいといわれますが、実際には中性脂肪自体に味があるわけではありません。それでも、私たちは経験的に和牛の脂のおいしさを知っています。この現象は、主に和牛独特の香りが関係していると判明しています。日本獣医生命科学大学の調査では、鼻をつまんだ状態では和牛肉と輸入牛肉の間においしさの差は見られなかったものの、鼻孔を開けた状態にすると95%の人が和牛を選んだのです。和牛の香りには、甘く香ばしいラクトン類と脂肪を香り立たせるアルデヒド類が含まれています。これは他の牛肉には見られない和牛独特の特徴です。
和牛の肉質
和牛の肉質を語る上で欠かせない存在が、豊富な肉汁のもととなるオレイン酸です。和牛は数ある牛肉の種類の中でも、脂肪が多く、その大部分がオレイン酸であることが和牛の肉質を作り上げているといわれています。不飽和脂肪酸は通常の脂肪と比べて融点が低く、口の中に入れたとき、体温によって脂肪が溶け始めるため、柔らかな食感となるのです。和牛はもともとオレイン酸を多く作り出す遺伝子を持っています。しかし、ホルスタインにはこの遺伝子の活性が低いため、サシが入っていても軟らかい脂にはなりません。柔らかくジューシーな和牛の肉質も、高い評価の大きな要因といえるでしょう。