
村上春菜(むらかみ はるな)さん
埼玉県出身。日本の大学を卒業後、大学院進学を目指して2007年にニュージーランドへ。カンタベリー大学付属の語学学校で1年間学び、大学院では地質学を専攻。卒業後、ニュージーランドの健康・美容・ファッション商品、ギフト、土産物を扱う「Aotea Gifts」に就職し、クライストチャーチの店舗で販売員として勤務。2011年2月のカンタベリー地震の影響を受け、オークランドの店舗へ移籍。オンラインのカスタマーサービスマネジャーとして働く。
大学院進学のためニュージーランドへ
日本の大学を卒業して、ニュージーランドに来たのは2007年の6月です。大学時代は環境科学を学んでいて、在学中から卒業後は就職ではなく勉強を続けようと考えていました。ニュージーランドを選んだのは、クライストチャーチにあるカンタベリー大学に私の勉強したい分野の学問があったからです。治安がいいこと、留学費用も比較的安いこともポイントでした。
クライストチャーチに着いてから1年はカンタベリー大学の付属の語学学校で英語の勉強をしました。読み書きはできても、大学院ともなると求められるリスニングやスピーキングのレベルが高く、授業にはディスカッションやプレゼンテーションも含まれるので、それに付いていけるだけの力が必要でした。
2008年の後期に大学院に入学し、Post-graduate Diplomaで勉強を始めました。専攻はGeology(地質学)の中でもHazard and Disaster Managementという防災管理。大学院での勉強は、もう大変の一言。アジア系の留学生は私だけで、他は地元の学生やアメリカやヨーロッパからの留学生。その中で日本人が1人やっていくというのはかなり厳しかったですね。

厳しい環境の中で備わった、主張する力
私の専攻では理系の分野だけでなく、さまざまな分野を幅広く学びました。地形を見てどんな災害が考えられるかというのは地質学、災害が起きた時にどう対応していくのかを考えるには社会学的なものの見方、土地の管理には地理学や法律も関わってきます。大学のバンを借りてクラス全員でカイコウラやウエストコーストにフィールドワークに出掛けることもありました。日本のように「学校が終わったらアルバイト」のような感覚は全くなく、課題に早く取り掛からないと置いていかれる。私は家に帰ると勉強に手がつかなかったので、学校に残って徹夜で勉強したり。図書館も24時間開いていました。
ノートを取れなかったところを見せてくれたり、課題を手伝ってくれたり、大変なときには一緒に勉強する仲間が助けてくれました。でも、助けてもらいたいなら、分からないことは分からないと自分からはっきり言わないと誰も助けてくれません。日本人ってなかなか言い出せなくて、分からないけど分かっているって言ってしまうことが多いと思うんです。でもそれは通用しない。分からないってしっかり言って、分かるまで粘り強く聞くというのは大学院での勉強を通じてかなり鍛えられたと思います。

難航した就職活動、諦めずつかんだ採用
大学院での勉強が終わって、当時は1年間勉強すると1年間のオープンワークビザが申請できました。ただ、移民局とのやりとりがうまくいかず、ビザを取得するのに数カ月かかってしまいました。申請をしているからニュージーランドにはいられるけど、仕事はできない。何もできないまま過ごす時間が続きました。
ようやくビザが下りてからも、仕事探しには苦労しました。何せ勉強した分野が特殊だったので、求人も多くありませんでした。初めは科学の領域にこだわって、手当たり次第研究所などにCVを送っていたんですが、あまりに求人が少ないのでどんどん幅を広げて。時々日本に帰ることも考えたけど、ニュージーランドで勉強したからにはやっぱりニュージーランドでの仕事を経験したいと思い、就職活動を続けました。
1年のオープンワークビザも終わりに近づいていた時、知り合いからAotea Groupの店舗の1つ「Naturally New Zealand」を紹介され、2010年の9月にクライストチャーチの店舗で販売員として働くことになりました。日本でも販売のアルバイトをしていたので接客の仕事への抵抗はありませんでした。

震災をきっかけにオークランドへ
就職から半年も経たない、2011年2月に起きた大地震では、私が勤めていた店舗も被害を受けました。建物自体は倒壊しませんでしたが、店の中の物がいろいろと倒れたり、地下が水浸しになり、立ち入り禁止に。地震の後1カ月はオークランドの店舗にお手伝いという形で来て、4月に完全に引っ越してきました。地震の影響でクライストチャーチにあった3店舗は全て閉鎖。小さな街が大好きだったので、4年間住んだクライストチャーチを離れる時はとてもさみしかったですね。
オークランドに移ってからは、オンラインの業務を担当するようになりました。会社のウェブサイトを通して寄せられるメールや電話での問い合わせに対応したり、注文を受けたり、ウェブサイト上の商品管理をしたり。商品の梱包も仕事に含まれます。店頭ではお客様とFace to Faceで接客できるのに対して、顔が見えない分、オンラインは難しいと感じることもあります。
たくさんある土産物店の中で、Aotea Giftsの店舗はどれも広々としていて、品揃えは他に負けないと思います。また、Aotea Giftsでしか手に入らない自社ブランドの「AVOCA」という商品は、ニュージーランド産にこだわった質の良さが売りです。会社の中ではオンラインはまだ小さな部門ですが、これから仕事を続けていく上で、もっとオンラインを盛り上げていきたい。もっと多くの人にAotea Giftsを知ってもらい、日本からの注文も増えてほしいですね。
ニュージーランド企業に学ぶ働き方
それから、Aotea Giftsの従業員は国際色がとても豊かです。ニュージーランド人やオーストラリア人、中国人に韓国人、南米やヨーロッパから来ている人もいます。文化や考え方が異なる分、一緒に仕事をしていて難しい部分もありますが、やっぱりこういう環境で働くのはとても楽しいです。これはAotea Giftsだからこその環境だと思います。
Aotea Giftsはニュージーランドのファミリービジネスです。ニュージーランド人の経営から学ぶのは、働くことと同じくらい休むことも大切にするということ。仕事はもちろん忙しいですが、働く時間と休む時間をきっぱり分ける。散歩やウォーキングが趣味で、休みの日にはビーチやリザーブを歩いたりしています。時間の余裕があるニュージーランドの生活が気に入っているので、できればずっとここで暮らしていきたいと思っています。
大学院で勉強してみて分かったのは、仕事をしてから勉強に戻る人が多いということ。仕事をしながら勉強している人もいました。ニュージーランドでは、本当に「やりたい」と思ったらいつでも勉強を始められる。でもその分、「勉強したい」という思いが強くないとやっていけない。大学、大学院ではなおさらだと思います。本気で勉強したい人には門戸が広く開かれているニュージーランドは本当にいい国です。やりたいと思ったらあきらめないで貫き通す。何にでも積極的に挑む姿勢が大事だと思います。
