Vol.183特集

特集2−2:ニュージーランドで 「移民」として働くということ


メインイメージ

 移民が働くハードルが年々高くなっているニュージーランド。現地で就職を目指す上で押さえておきたいポイントを、「就活メソッド」で解説を担当していただいているMigrant Action Trustの西村達男さんに伺いました。

西村達男(にしむら たつお)さん
京都府出身。マーケティングリサーチ会社で市場調査や社員採用を担当。2009年にニュージーランドに移住し、オークランド工科大学(AUT)でPostgraduate Diploma in Arts (Human Services専攻)を取得。大学の教官に紹介されたMigrant Action Trustでボランティアとして働き始め、その後正規スタッフに。Migrant Action Trustでは移民の仕事探しやセツルメントのサポートを担当。また、関連NGO、Earth Action Trustでは環境関係のプロジェクト推進に関わる。

ーニュージーランドの労働市場について教えてください。

 ニュージーランドはこれまで、自国に不足している労働スキルを補うため、あらゆる仕事分野で積極的に移民を受け入れてきました。そして、ANZSCO(Australian and New Zealand Standard Classification of Occupations)という職業分類基準に従って、スキルレベルが高い職種(レベル1~3)で能力があると認めた人には、「技能移民」として永住権を与えてきました。しかしこれからは、経済への貢献度(=年収)を基準に技能移民を選ぶという方針に転換することになっています。
 2016年12月の集計では、ニュージーランドの失業率は5.2%です。仕事のないニュージーランド人や永住権保持者を積極的に雇用してスキルを身に付けてもらうことで、新しい移民に頼る割合を減らそうという考えもあります。これからももちろん、日本人であることが役立つ仕事や、専門スキルを生かせる仕事などで就職するチャンスはありますが、永住権を目指して仕事を探す人にとっては、以前よりも状況は年々厳しくなっているのが事実です。

ー移民として就職する難しさはどんなことが挙げられますか。

 地元の企業を目指す場合は、スキルの面でも英語力の面でも自信を付けた上で就職活動を始めたいところです。ただそれであっても、同じ求人に自分と同程度のスキルのニュージーランド人が応募していたら、ほとんどの雇用主はニュージーランド人の方を採用するでしょう。移民である私たちが優先的に仕事を得るには、スキルが上回っていること、そしてそのスキルを上手にアピールしていくことが必要になります。
 コラムでもお伝えしている通り、Migrant Action Trustでは、就職活動に「マーケティングの発想」を取り入れることをおすすめしています。ニュージーランドではどんなスキルが求められているかを客観的に分析し、また、自分に興味を持ってもらうにはどうすればいいかを考えて、計画的に就職活動をしましょう。時には、自分の「コンフォートゾーン(快適領域)」から抜け出す必要もあるかもしれませんが、その分チャンスを増やすことができるはずです。

ーニュージーランドではどんな人材が求められるのでしょうか。

 ニュージーランドで求められているのは、専門分野での高いスキルと豊富な経験を持っているスペシャリストです。また、従業員数が20人以下の小さな企業が全体の97%を占めている国ですので、一人一人の裁量権が大きく、個人で判断を任せられることも多いです。そのため、上司からの指示を待つ受け身な人ではなく、リーダーシップがあり、頼りがいのある人が好まれやすいと感じます。
 また、日本人と同様、ニュージーランド人も、人に対する配慮や思いやりをとても大事にします。そのため職場でも、同僚や取引先と気持ち良く付き合ったり、状況に応じて物事を適切に判断する能力(「ソフトスキル」などと言われます)が求められます。就職活動においても、一人一人の人と良い関係を持てるように意識してみてください。

ーニュージーランドの学校には行くメリットはありますか。

 「Essential Skills」のカテゴリーで就労ビザを申請する多くの人が、「Labour Market Test(Labour Market Check)」を受ける必要があります。これは雇用主が「ニュージーランド人や永住権保持者で仕事ができる人を探してみたが、この人以外に適切な応募者がいなかった」ということを移民局に報告して審査を受けるものです。しかし、NZQAで認定されたしかるべきコースを修了した人は、この審査を免除されます。いわばニュージーランド人と同等の立場で仕事が探せるという利点があります。 
 また、ニュージーランドに来て初期に学校に通うことで、英語環境になじめるというメリットもあります。さらには、就職活動でも、現地の学校を卒業していると、親しみや安心感を持ってくれる雇用主もいるでしょう。学校で資格を取るのには1、2年かかる場合もありますが、長期的に考えるとこのようなメリットがありますので、検討する価値はあると思います。

ー移民として働くにはどのような努力が必要でしょうか。

 言葉や文化の壁を乗り越えるために、地元の人たちと共有できる「接点」を増やして、ニュージーランド社会に溶け込む努力をすることが大事です。それには地元の人たちの会話の仕方を真似たり、地域で行われている活動に協力したり、いろいろな方法があります。そうしているうちに、仕事で関わる人たちとも良い関係を築きやすくなるでしょう。私たち日本人が「日本に興味がある」と言ってくれる外国人に好感を持つのと同様、共有できる接点があることで文化の壁を越えやすくなります。
 それから、大事なのは最後まで諦めないこと。ビザの有効期限が切れる数日前にジョブオファーを勝ち取って滞在できた人なども実際に見てきました。現実には時間的な制限があったりして焦ってしまいがちですが、できることを一歩一歩進めていきましょう。

※ビザに関する情報は随時変更されます。最新のものを確認してください。

▼今月の「NZ式 就活メソッド」もチェックする!

https://magazine.nzdaisuki.com/content/1783

各種法律や移民局の規定等は改定されている場合があります。詳しくはお問い合わせください。

お問い合わせはこちら