Blue Tickというマークを知っていますか? スーパーマーケットに並ぶ卵や鶏肉、豚肉とハムやベーコンなどの豚肉加工食品のパーケージに付くマーク。動物保護団体SPCAが2001年から行っている認定機構で、SPCAが定める動物愛護の基準に合格した生産者から出荷された製品だけに付けられる。そのBlue Tick機構の運営と広報を一手にこなすキャリアウーマン、ジュリエット・バンクスさんに話を聞く。
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子供の頃から動物は大好き。ずっと何かペットを飼っている。 | |
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NZ各地の農場を視察して回ったり、メディアと話したり、仕事内容は多岐多様。 | |
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まやかしが多いマーク
たとえば卵。スーパーマーケットの棚には本当にたくさんの種類の卵が並べられていますよね。パッケージをよく見比べてみてください。SPCAのBlue Tickのマークのほかにも、緑のティックや、鶏をデザインしたマークなど、いろいろな認可証が見つかります。フリーレンジ(平飼い)の卵には特に多種類の認定マークが付いています。そんなマークの多くは、企業が自主的に何らかの基準を定めてそれに合格した、ということを示しているものですが、よくよく調べてみるとその基準が曖昧だったり、実際には全く審査が行われていなかったりすることが多いようです。残念ながら、認可マークは宣伝効果を得るためだけのまやかしだったりします。そんな中で、SPCAのBlue Tickは絶対の信頼性があります。この審査認定機構は2001年にFree Rangeの卵から始まりました。純粋に動物愛護の見地から始まったものです。NZの全てのファームアニマルが檻から放され、鶏、豚、子牛など動物がそれぞれの種の自然の習性に合った環境でゆったりと飼育されるようにするのを最終目的として掲げています。
細かく厳しい審査基準
皆さんはフリーレンジの鶏、というとどんなイメージを思い浮かべますか?多くの人が、太陽輝く青空の下で広々とした緑の草原にポツポツと点在する鶏、を想像するのではないでしょうか。でも、実際、鶏は自然界では森林に小集団で住む鳥。開けっ広げの空間には出たがらないのです。特に、お天気のいい日には。フリーレンジの鶏には適度な大きさの鶏舎に、適度な鶏の数、自由に出入りのできる外のエリアが必要です。その外のエリアもただの草地ではなく、適度に木が植わっていたり,シェルターが設けられていたりしなければなりません。それから、もちろん、質の高い飼料と水は必要不可欠です。Blue Tickでは、鶏舎何平方メートル当たり何羽、外のエリアの広さや設備、飼料や水の量と品質など、細かく厳しい基準が設けられています。また、設備だけではなく、飼育する人間がどのように鶏を扱うか、も重要な査定基準です。1年に1回、SCPAの審査員は対象になる生産者を審査、認可を行います。また、突然抜き打ちで審査することもあるので、ファームはずっと高水準を保っていなければなりません。審査員は、獣医や経験豊富な生産者など、審査する特定の動物の習性に精通した人たちが選ばれています。
より多くの人に正しい選択をしてもらいたい
さて、卵から始まったこのBlue Tickは、現在、鶏肉、豚肉に適用されています。もちろん、家畜の種類によってそれぞれ異なった基準が設けられています。今のところ、8つのブランドの製品にBlue Tickが付けられ、流通しています。また、最近、ターキーの審査認可も始めました。クリスマス前になったら、Blue Tickマークの付いたTegelブランドのフリーレンジ、ターキーが店頭に並びます。さらに来年は、サーモンと仔牛(Veal)も認定機構に加えられる予定。そして、ゆくゆくは牛肉(Beef)やラム肉(Lamb)、乳製品もBlue Tickに加えたいです。実は、現在NZで流通しているポークは何と45%もが輸入品。安い輸入肉は、狭いコンクリートのおりに閉じ込められて無理やり太らされた豚からの製品。安いベーコン、ソーセージ、ハムなどはほぼ間違いなくそんな豚肉を原料としています。今度、ランチにベーコン&エッグパイを食べるとき、ちょっと考えてみてください。このベーコンはどんな風に作られたのか、と。確かに動物にとって環境の良いファームは、そうでないファームに比べて効率が悪く、大量に出荷することができません。従って、どうしても製品の値段が高めになります。でも、なるべく多くの人に、なるべく多くの機会に、多少高くても、品質保証がなされた国産の製品を購入して欲しいです。いい環境できちんと飼育された動物からできる製品は、栄養価も優れ、味も段違いに良い。一流のレストランシェフが先頭を切って使用する素材は、Blue Tickのものが多かったりしますよ。より多くの人が正しい選択をして需要が高まれば、フリーレンジに切り替える生産者も増え、製品の価格も下がり、購買層が増える、そんな好循環が起きるはず。そうなって欲しいものです。
満たされた気持ちになれる仕事。
私は企業戦力として20年余り働いてきた間に、2度も人員削減にあいました。その経験を通して、企業は所詮お金儲けだけが目的で、どんなに一生懸命に働いても社員はただの頭数に過ぎないんだ、ということが身に沁みました。だから2年半前、非営利団体SPCAのこの仕事に就いたのです。この仕事は、私のマーケティングの実力と経験を生かすことができ、しかも動物が生きる環境を改善する、状況を変えることができる。とても意義のあることですよね。私が新しいファームを審査するたびに、何千、何万という数の動物が救われるんです。そう考えると自分自身、とても気分が良くなります。誇りにさえ思っています。実はこの仕事のオファーがあったとき、同時にある企業からSPCAよりも少ない就業時間で給料が倍、という仕事の話もあったんです。でも、今の仕事を選んだ。そしてそれは良かったです。ただお金だけのために働くのではなく、何らかの形で世界に貢献でき、結果、満たされた気持ちになれるこの仕事を私は楽しんでいます。