Vol.130 Career Up -ニュージーランドの移民コミュニティをサポートする仕事


ニュージーランドは移民の国とも呼ばれる程、世界各国から移り住んでくる人々が多い。それにあわせて移民をサポートする機関も多く存在する。西村さんの勤務するMigrant Action Trust(MAT)もその一つだ。移民に対し、就職や移住に関する諸々の事にサポートを行っている。自身も移民として家族と一緒にニュージーランドに移り住んで来た西村さん。移住までの道のりと現在のお仕事について話を聞いた。

migrant action trust【Profile】
プロフィール〉西村達男(にしむら たつお)12月27日生まれ、京都府出身。大阪市立大学修士課程文学研究科卒業。2009年に家族でオークランドへ。AUT卒業後、Migrant Action Trustでボランティア勤務。後にフルタイムのポジションへ。2012年はじめに念願の永住権を取得。今年の夏休みは、家族ではじめてのロトルア旅行を計画中。
*Migrant Action Trustでは、それぞれの方のニーズに応じて、情報の提供、専門機関との仲介、サポートの提供などを全て無料で行っています。もちろん秘密は厳守しますのでご安心下さい。また、専門家によるカウンセリングも低料金で提供させて頂いています。
電話:09-6293500 /住所:766 Sandringham Road Extension, Mt Roskill, Auckland
Email: tatsu.migrantaction@xtra.co.nz
URL: http://www.migrantactiontrust.org.nz/

Migrant Action Trust
Migrant Action Trust
大学では、年間トータルで40,000語のエッセイを書いた。推敲を重ね、アサインメントがある期間は缶詰になったこと多数。
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お子さんは現在小学校のYear4。全校生徒が400人程の学校で、先生が生徒一人ひとりを見てくれていると感じる。校長先生が全校生徒の名前を覚えている程教育熱心。
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家族で暮らすノースショアは自然も多く、休日はビーチを散歩するのが楽しみ。
Migrant Action Trust
大学入学の英語の勉強からはじまり、仕事探し、永住権申請まで全て真剣に取り組まないといけないものだった。大変な面は多々あったが、今ここに居られるのはニュージーランドと縁があったから。

子供のためにニュージーランドへ。
東京で15年働いていました。マーケティングリサーチの会社で、リサーチ分析の仕事を10年、その後人事部で採用担当の仕事を5年担当しました。もともと、海外に旅行する内に日本を出て、世界の人の中で自分の力を試してみたいという気持ちがありました。また一人息子がとても利かん坊の性格で、海外で育つほうがこの子には向いているのでは、と思いました。そうして考えた結果、2006年にニュージーランドへの移住を決意。すぐに渡航したわけではなく、まずは3年がかりでニュージーランドへ移り住む準備を整えました。2007年末に会社を退社、2008年は英語の勉強とニュージーランドの大学入学準備。晴れてAuckland University Technology (AUT: オークランド工科大学)のPostgraduate Diploma Courseから合格通知を頂き、2009年に妻と息子と一緒にニュージーランドへやってきました。

自分の経験分野で学ぶ。
AUTのPostgraduate Diploma Course は修士課程の1年目にあたるコースで私の専攻はHuman Servicesでした。ニュージーランドへ移住となると最初のハードルは永住権ですから、移住の計画段階では、エージェントの方からニュージーランドの職種不足リストに関連するコースも紹介されました。迷いましたが、Human Servicesは自分が日本でやっていた人事という仕事とも関連があり、何より興味もあったのでそちらを選びました。Human Servicesの専攻では、社会科学の分野の授業をたくさん選択しました。社会調査、人間関係学、心理学、また調停・仲裁・裁判など法律に関する内容、語学学校などサポートサービスを提供する組織について最適な運営方法などを学びました。授業を通じて、ニュージーランドのソーシャルサポートの基本的な仕組みや考え方が理解できたので、それが今の仕事のベースになっていると思います。

家族で暮らすニュージーランド。
ニュージーランドに来た当初は5歳だった息子は、はじめは人見知りもあり、英語が話せなくて小さくなっていた面もありましたが、今ではすっかり学校に慣れ、たくさん友達を作って楽しそうに学校に通っています。ニュージーランドの教育システムは日本と違い、小学校には教科書や明確な時間割といったものが存在しません。ひとつのクラスの中でもグループがあり、個人の習熟度によってやっていることが違う、といった感じです。叱らない、得意な部分を伸ばす教育方法で、中には優しすぎる、もっと厳しく教えてほしいと思われる方もいるようですが息子には合っているスタイルだと思います。息子は今は数学が得意なようです。小さな子供がいての移住でしたが、息子が小学校にあがるのと同時に、妻がティーチャーズエイドというボランティアに参加しました。これは、空いている時間に学校に行って、先生のお手伝いや授業のサポートをするものです。ニュージーランドの教育スタイルは日本と異なる部分がたくさんありますが、しょっちゅう学校に顔を出して息子が授業を受けているのを見たり、先生と面談したりすることで大きな苦労やトラブルなく現地の小学校に溶け込めたのだと思います。

日本人コミュニティをサポートする仕事。
私の働くMigrant Action Trust (MAT)は、世界各国からニュージーランドに移ってきた人達に、就職やスキルアップに必要な情報やアドバイスを提供したり、コミュニティの意見をまとめて政府に働きかけたりなど、諸々のサポートを行う非営利団体です。英語や文化の違いで困る場面が多い移民に対して、移民同士の助け合いを推進する活動をしています。私は2010年にボランティアとしてMATで働き始めました。現在のメインの仕事は、オークランドにお住まいの日本人の方々に、ニーズ別にセミナー、ワークショップを企画、実施したり、コミュニティグループの運営のお手伝いしたりすることなどです。セミナーの分野は、就職活動の仕方、雇用法、ライフスキル、家計の管理方法など多岐にわたります。もちろん、個人の相談にものりますし、専門家や専門機関との仲介も行っています。ニュージーランドはフェア精神を尊ぶ国で、一人ひとりの権利がきちんと扱われないといけない、という意識が徹底しています。そのため、コミュニティレベルでの助け合いの意識が凄く強く、サービスも豊富なのでその点は多いに学ぶところがあると思っています。ニュージーランドには、MAT以外にもCAB Language Link や Settlement Supportなど、英語が母語でない移民をサポートする機関があります。困ったことがあった時、こうした機関に直接問い合わせるのは敷居が高いと感じる方もいるかもしれませんが、私のような日本人スタッフがいたり通訳サービスがあったりする機関も多いですし、何より日本人含め移民の生活をサポートするのが機関の役割なので、ぜひ安心して利用して欲しいですね。

多国籍チームで働くこと。
MATでは仕事の仕方がプロジェクト単位なので、基本的には全て担当者の裁量に任されています。日本のように上司からの指示を待ってそれに従う、というスタイルではなく自ら調べ、周囲と調整し、期日までに満足のいくものを作るという方法です。日本で大きな会社で長年働いていたので、この違いを理解するのに時間がかかりました。今のプロジェクトでは、色々な組織や立場の方とお会いする機会があります。立場のある人でも、本当に気さくに接してくれ、学ばさせて頂いています。今担当している日本人コミュニティのプロジェクトでも自分の考えで進めることができるので、責任は大きいですがやりがいを感じています。

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