Vol.87 時代を飾るキウイ ウォッカ「42 Below」創立者


全国のリカーショップに並ぶニュージーランド・メイドのウォッカ『42 Below』。いずれは自分でビジネスを立ち上げたい、そう思った会社員が仕事の合間に始め、今やニュージーランドで最も速い成長を遂げた会社になり、世界の大企業によって買収されたことで各方面から注目を集めた。ビッグビジネスの発想のキッカケは仕事の中で培った経験からであった。

Geoff Ross ジェフ・ロスさん 42 Below founder Director of 'The Business Bakery'ニュージーランド起業家の成功物語【Profile】
1967年オークランドの南のPaparim生まれ。両親の影響を受け、若いころは鹿牧場経営をしたいと思っていた。大学に通い直し、働き始めた大手広告代理店では、営業セクションにて最若手ディレクターの一人になった経験もある。

模索した新しいビジネス

Geoff Ross ジェフ・ロスさん 42 Below founder Director of 'The Business Bakery'
スタートさせたときに勤めていたのは世界的に有名な代理店Saatchi & Saatchi社

ファーマーの家庭で育ってそのまま農業に従事しましたが、広告の仕事に興味を持ち、大学へ進みました。卒業後、ニュージーランドが規制緩和を行い、経済が落ち込んでいるときでしたので、就職もはやり厳しい情勢でした。そんな中で、幸運なことに私は大手広告代理店から採用の返事をもらい、ウェリントンで勤務することとなったのです。それ以来、今日までマーケティング、営業やマネージメントが私の仕事のフィールドでした。
会社勤めをしながらも私はいつも、自分のビジネスを立ち上げたいと思っていました。当時、私の担当はアメリカ系の企業だったのですが、米国を訪れた時にアメリカ産のウォッカを見つけたのです。その時に、ニュージーランド産のものを造っていけるのではないか?と思ったのです。
その頃、ニュージーランドのアルコール市場を見てみると、ビール以外にワインが少しずつ伸びていた頃でもありました。ニュージーランドで多くの人が生産に携わっているワインの市場がこのまま拡大していくのは目に見えていたのです。北欧のように、冷たい気候のニュージーランドの風土、国産のウォッカがなかったこと、カクテルという市場が今後伸びていくであろうと予測したこと、それらの部分で私の新しいビジネスの構想とウォッカが一致したのです。

いいウォッカでもマーケティング次第

Geoff Ross ジェフ・ロスさん 42 Below founder Director of 'The Business Bakery'
マーケティングを他に任せる事でウォッカ造りに集中する事ができた。

初めは自宅のガレージでウォッカ造りを始めました。最初は本を読み、専門家に意見を聞きながら、友人に試飲をしてもらいながらの、試行錯誤の中でのスタートでした。仕事が終わった夜と週末の時間を利用して、基本的に、原料はすべてニュージーランドのものを使っていました。ガレージでは一回につき、約2週間かけて造っていました。そこでできるのはたった12ボトルです。こうして少しずつ、コツコツと進めていきました。こうして1999年にやっと、売り物になるボトルを完成させました。私が最初に売ったバーは今はもうありませんけどね。
ウェリントンの緯度が南緯42度であること、アルコール度数が42度であることから、42 Belowのネーミングにしました。
さて、次のステップはウォッカをいかに売るかと言うことでした。私はこのビジネスをスタートさせようと思った時点でマーケットは世界だと思っていました。ですから、ボトルのデザインやロゴマークなど、すべて世界に通用するものを使う必要があると考えていたのです。そういった点では私は他の起業家よりも少しだけ有利なポジションに立っていたのではないでしょうか。というのも、それまで広告業界で仕事をしてきたため、手伝ってくれる友人やデザイナーなど、プロフェッショナルなサポーターたちが周りにいたのです。
こうして1996年にガレージで始まったウォッカ造りは約8年続けました。アメリカで火がつき始め、2002年に投資家があらわれ、会社を大きくするという話が持ち上がりました。そのとき、仲間と話し合ったのは、私たちが今もっているブランドつまり42 Belowと言うものを大切にしていこう、ということでした。だから、大きな資本が入ってきたとしても、今まで通りの42 Belowの組織体系を維持したのです。そして2006年に世界有数の洋酒メーカーBacardiグループによって買収される事になりました。それを機に42 Belowの一線を離れることにしました。

次への挑戦

ecoya'一番大切なモノは、現在、展開しているビジネスのアイテム、ソイワックスのキャンドル。 ecoya'
環境にも配慮したソイワックスキャンドルECOYAは日本でも手に入る。

現在、私は二つの新しいビジネス展開を試みています。
一つはソイワックス(大豆)・パームワックス(椰子)を使ったキャンドルecoya(エコヤ)への投資です。従来のキャンドルと違い、天然素材なので、燃焼時に有害な物質などを出さず、体に優しいキャンドルです。ecoyaは42 Belowでオーストラリアのマーケットを担当してくれていた友人が持ち込んできました。アロマキャンドルなどに良く使われ,一般的なキャンドルに使われているパラフィンよりもクリーンで燃焼時間も長いとも言われています。
そしてもう一つは携帯電話の画像配信です。これは広告マンとしての性質なのでしょうか。テレビや雑誌の広告、インターネットの広告に続く、次世代の携帯電話の広告展開を狙っているものです。まだ、ニュージーランドではこの分野は発展途上ですが、他国の動向を見ている限り、十分に次のマーケティングツールになる高いポテンシャルを持っていると考えています。
これら2つの新しいビジネスは、安定しはじめた42 Belowに比べるとこれからのビジネスです。これらこそが、当面の私の課題であり、現在はこの2つに集中しています。
一つの情況だけに留まらず、常に新しいビジネスを考え出し、それを展開させていく。これが私にとってのライフワークなのかもしれません。

カテゴリ:起業系
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